2月14日。
ある人々にとっては厳しい真冬に射し込んだ、温かい春の日。
またある人々にとっては、悲しみと切なさにむせび泣く、極寒の日。
そんな、天国と地獄がない交ぜになった不思議な日はまさに「革命の日」。いや、乙女にとってはそんな生易しい響きは無い。
そう……これは「戦争」なんだ。
女同士の、血も涙も無い熾烈な戦いの1日なのだから。
そしてもう、あと数時間で。
運命の日が訪れる。
――――St. Valentine’s Dayというの名の、審判の日が……。
「よしっ……出来た!」
目の前には、我ながら上出来と褒めたくなるチョコレート。綺麗にラッピングも出来て、満足のいく代物。
朝日がキッチンに差し込み、チョコを照らす。
あぁ……神も今日という日を祝福してくれてる!
私の出陣を、門出を、祝ってくれてるんだわ……!!
そんな都合のいい妄想を抱きつつ、家族が起きる前にキッチンを片付ける。そして、気合を入れなおすため、シャワーを浴びる。熱いお湯が、体を急激に目覚めさせる。
部屋に戻り、制服に身を包む。
髪を乾かし、整える。
化粧は……薄く、でもポイントは押さえたナチュラルメイクでいこう。けばけばしい女は、それだけで戦死よ!(力説)
戦死……
そうだ。今日は戦争。もちろん、無事生還する可能性を一番に願っているけど、やっぱり戦死……という悲惨な結果だってあるに違いない。乙女は、常に死に向かって、この日に臨んでいるのだ。それくらい皆、必死なのだから。
スカートの皺をチェックして、ブレザーに付いた埃を念入りに取る。
うん。今日の私は完璧! 今まさに、出陣するに相応しい神々しさを放ってるわ!!
試しに、鏡の前で微笑んでみる。
何度も練習した、告白の言葉と一緒に。
「……好きなの。付き合って……」
問題は、顔の表情と角度だってことは半年以上前から研究済み。
ちょっとだけ不安を残して、でもきちんと意思を伝えて。
あとは、潤んだ目元で泣きそうに微笑む。
これで完璧! 落ちない男はいない!!……とは言えないけど、成功率は高くなるに違いない。
演技? 馬鹿言わないでよ。これは武器! れっきとした戦術の一つなの!
女の子はね、純粋無垢なだけじゃあ幸せになんてなれないんだから!
お金が無い時に、どうしても欲しいものが出来たら?……アルバイトして、お金を貯めるでしょ。
成績を上げたいと思ったら?……勉強する。
試合で勝ちたいなら?……練習するしかない。
幸せは誰かが運んでくれるものじゃない。
本当の幸せは、自分で掴むものなんだよ。
だから、出来る限り、最大限に努力するのは当然の勤め。
つまりこれは、努力のうちってこと。演技派って言われようが、何でも構わない。
それくらい私は、今日という日に賭けてる。
それくらい私は……彼が好きなんだから。
「行ってきます!!」
家を飛び出すと、玄関先には見知った顔が二つ。
「おはよう」
「いよいよだね」
「……うん」
二人は私の友人。そして、親友だ。
私たちは三人とも、別々の学校に通っている。
そして、それぞれ、恋をしているのだ。
「今日は皆、普段より三割り増しに良く見えるよ?」
「あははっ、そういう自分こそ、念入りにお肌の手入れしたでしょー!」
「ふふっ、シャンプーの香りが、気合いを感じさせますなー」
笑いあいながら、頷き合って。
私たちは、お互いの肩を叩き合った。
「「「いざ出陣! 目指すはアイツ・先輩・キミのハートだぁっ!!!」」」
さてさて、私がチョコをあげたいのは……
(どのヒロインの恋戦争を体感しますか? クリックで物語を追ってくださいませ♪)
※ちなみに、上から投票数の低い順に並んでます。(3位→2位→1位という風に)宜しければ、上から順にどうぞ☆
「照れ屋ですぐ真っ赤になっちゃう、リンゴみたいなアイツかな」と用意周到な真っ黒、攻め攻めヒロインと戦争しに行く(ここまでの一人称担当)。
「天使並みに可愛いのに、小悪魔的に私を翻弄する毒舌家に……」と緊張しまくり、ちょっとM気質の強いヒロインと革命を起こしに向かう。
「口数は少ないけど、いつも落ち着いていて、頼れるお兄さんみたいなキミだよ」と、ボーイッシュで天然、天真爛漫ヒロインと頑張ってみる。
皆さん、お待たせしました。2007年バレンタイン特別夢です。
投票総数は、約一週間だったのですが176票をいただきましたv 投票にご協力いただいた皆様、ホントありがとうございました。
各キャラのss、どうぞご堪能くださいませ♪
2007年2月15日? 桃井柚