第17章〜推理のてに〜




――8:45

「そろそろ確かめに行かなきゃな……」
 今までは麻衣を待ったが、どうやら時間切れのようだ。もうこれ以上は待てない。
 僕が腰を上げ、部屋から出ようとした時だった。
「義高! 開けて!」
 ノック音と共に、麻衣の声が聞こえた。
「麻衣!?」
 僕は急いで扉を開けた。
 そこには携帯を握り締めて佇む麻衣がいた。
「麻衣……」
「義高……私……」
 僕は彼女の表情で、全てを理解した。
 彼女にも犯人が分かったのだろう。
「麻衣、時間が無い。急ごう!!」
「うん……!」
 僕らはある場所へと向かった。
 犯人を確かめる為に――
















 部屋に着いた僕と麻衣は、それぞれ違う事を確かめた。
 やっぱり麻衣は、僕が気付かなかった事に気付いていた。
 逆に麻衣は、僕が気付いていた事に気付かなかったという。偶然の幸運だった。

……これで証拠は全て出揃った。後は犯人を挙げるだけだ。
「麻衣……」
僕は呟く。
麻衣は、自分の確かめたかった事を確かめ終えたのだろう。大きく溜め息を吐いた。
「間違いないわ……犯人は……」
「……ああ。多分あの人だ」
「どうしてなの…っ…何で…………」

 僕らは失意と共に、部屋を出た。
 頭の中には、様々な疑問が渦巻いている。
 しかし、それもこの後明らかになるはずだ。
 そしてそれを明らかにするのは僕らの仕事――使命だ。
 皆を呼ぼう。この長かった惨劇に終止符を打つ為に――

「麻衣。皆を集めよう」
「……うん」
 麻衣はそう言うと、電話を掛ける。
「もしもし……縁?」
 どうやら電話の相手は吉野さんのようだ。
「……二階に来てくれる?」
 そしてしばしの沈黙の後――
「――犯人が…………分かったの」
 麻衣の声が、屋敷全体に響いたような気がした。






 電話を切った私は、義高を見つめた。義高も無言のまま私を見た。
「麻衣……」
 義高が沈黙を破る。
「麻衣。どんな結末になっても――」
「仲間――でしょ?」
 私は笑みを作る。
「……大丈夫よ。きっと……」
「……」
 その時、階段を上がる音が聞こえてきた。どうやら皆が集まってきたようだ。
「さあ、ここが正念場。最後、しっかり締めないとね!」
 私は義高の肩をポンと叩くと、彼に背を向けた。
「麻衣……」
 私はそのまま皆が二階に着くのを待った。
 背後では義高が複雑そうな表情を浮かべているに違いない。
 
 でも――仕方ないでしょ?
 私が落ち込んでも、どうにもならない。
 もう遅いんだよね……何もかも……――

「麻衣ちゃん……犯人が分かったって!?」
 後ろから声が聞こえた。ユリエのようだ。
 振り返ると、全てのメンバーが揃っていた。
「今から説明するから――とりあえず……皆、この部屋に入って」
 私はある部屋を指差した。
「この部屋は……」
 華子が呟いた。
「ひ……」
 縁は震えた。
「ここは……?」
 ユリエは首を傾げていた。
「……何でここで?」
 先輩は訝しげに眉根を寄せる。
 当然だ。
 皆はきっとわけが分からないに違いない。
 でも、ここで説明することに意味があるのだ。
 しかし、私は一瞬言葉に詰まってしまった。
「……僕に任せて」
 ふいに、義高が耳元で囁く。
 彼は気を使ってくれているのだろう。
 確かに私が言うにはあまりに酷な事なのかもしれない。
 できれば私も言いたくない。
 こんな事件、夢か幻であってほしいと願っているのだから。
 でも……ここで――最後で――逃げたら、私はこれ以上成長できない気がする。ここは辛くても踏ん張らなければいけない所なのではないのだろうか。
 私は刑事を見つめた。

――僕は麻衣に囁いた。
 「僕が言う」と。
 彼女はもう十分頑張ったと思う。これ以上は辛過ぎる。
 彼女の探偵としての能力は、やはり本物だ。
 何よりも、辛くても乗り越えていく力はとても敵いそうにない。
 しかし、この後を彼女の口から言わせるのは、本当に残酷だ。仲間を犯人として挙げるのだ。それがどんなに辛いかなんて、言わずと知れたことだ。僕にはそれが耐えられない。僕ならできない。
 でも……麻衣がもし……それでもあえて言う事を選ぶなら僕はそれを見守ろうと思う。
 それが彼女の――メンバー全員の――ためだというのなら……。 
 僕は探偵を見つめた。



 そして、二人の出した結論は……


A.麻衣を信じよう
B,義高に任せよう



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 さあ皆さん、この選択肢はラストを飾る主人公を決める重要なもの。麻衣篇と義高篇、どちらを選ぶかによって、結末が180度違うかもしれません。ちょっと大げさですがね……。全てはあなた次第です。この先、最後の推理が始まります。二人と共に慎重に答えを選び、それぞれを真実に導いてあげてください。
 ……選べましたか?
それでは皆様、選択肢をクリックです。どちらを選んだとしても、驚愕の最終回が待っているはずです。是非、「探偵乱舞〜桜山荘殺人事件〜」最終章をお楽しみ下さいませ。皆様とまた最後にお会いできることを楽しみにしております。

 桜山荘総支配人