も、萌えた!!

 私は床に突っ伏しながら、呻いた。
 今、夏休みイベントと称し、期間限定でときまほの番外編が公式サイトから配信されており、それをプレイし終えたばかり。
 本編をクリアしていなくても楽しめると書かれていたので、迷わず私はプレイしたのだけど、これがまたものっそい萌えた。……一部、本編では垣間見られない心の闇みたいのも出てきちゃって焦ったけども。しかもそれが、自分の彼氏と最近色々ダブって見えてきている、メインヒーローの彼とかちょっと笑えなかったりもしたけども、いやいやこれはゲーム。二次元ですから! と自分に言い聞かせた。
 全体的にさくっと終われて、でも本編がますます気になる作りは流石といったところ。
 何とも言えない幸せな余韻に浸りながら携帯に手を伸ばすと、着信を知らせるランプが点滅を繰り返していた。

――――不在着信 二件

 時刻は一時間前と、三十分前に一件ずつ。後者はの番号だった。前者は知らない番号からだった。ゲームに夢中になり過ぎて、着信に全く気付かなかった。
 急いでに電話を掛け直したが、彼が電話に出る気配は無かった。コール音だけが繰り返される。
 時間もだいぶ遅いので、もう寝てしまったのかもしれない。仕方なく、電話に出られなかったことのお詫びと用件を確認するメールを打ち、送信した。

 さて、私も寝ようかな。
 今日は楓ちゃんの夢でも見れないかな。
 そんなことを考えながら、ベッドに潜り込んだ矢先だった。着信が鳴り響く。からだ。
 私は完全に彼女モードになって電話に出た。

『もしもし? 。遅くにごめん』
! ううん、こっちこそさっきは電話出られなくてごめんね。お風呂入ってて」

 お風呂もゲームも変わらないよね? うん。

『そっか。あのさ、明日の夕方暇かな?』
「うん、空いてるよ」
『実は明日、近所の神社で夏祭りがあるんだけど、もし良かったら、一緒に行かない?』

――――夏祭り!?
 一瞬、ときまほが頭を過る。いやいや、夏に祭りはつきものなんだし、たまたまだよね、たまたま……。

「うん、行きたい!」
『良かった。じゃあ、夕方、俺の家の駅まで来てもらえるかな』
「うん! 楽しみ〜」
『じゃあ、また明日。おやすみ』

 ……さて、浴衣の準備しなくちゃ!
 その後、夜中にも関わらず、お母さんを起こしに言った私は、案の定母の雷を受けることになった。



 すっかり夜も更けた頃。
 流石に眠くなり、浴衣の準備もそのままにベッドに潜りかけた矢先だった。

 知らない番号から着信だった。
 こんな遅くに誰だろう?
 おそるおそる電話に出ると、相手はまさかのAだった。

『グッイブニング、ちゃん!』
「……あの、おかけ間違いかと思いますので、私はこれで」
『いやいやいや、ちょ、それは酷いだろ!』
「おあいにく様、私にはこんな夜中に電話掛けてくるような非常識な知り合いいませんので。さようなら」
『うわわわ、ごめんって! 怒るなよ。悪かったよ、こんな時間に。でも、さっきから何度か電話してたんだぜ?』
「私、あなたの番号なんて知らないし」
『ったく、相変わらずつれないなあ……でも、これで俺の番号覚えたな? ちゃんと登録しとけよ』
「は? 何でよ」
『いいから登録しとけって。これからも連絡するしさ』
「何言ってんのよ」
 Aはこちらの疑問を全て無視して話し続ける。
『でさ、本題。明日近所で祭りがあってさ。ちゃん、一緒に行かない?』
「無理ぽ」
『……無理ぽって、お前ね……』
 二ちゃんねる用語? 何それ知らない。相手はAだしどうでもいいし。
「明日はにお祭り誘われてるの。だから無理」
『……へえ、誘われてなかったら、来てくれたんだ?』
「なっ、違うわよ!誰があなたなんかと」
『でもざーんねん、俺もと一緒に行く約束してんだよ』
「はっ?!」
『だから、そもそも俺がアイツに祭りがあることを教えてやったの』
「意味が分からないんですけど!!」
『だから、明日は三人で仲良く回るってこと』
「ちょっ、聞いてないよ!」
『だから今言ってるんだって』
「いーや〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
 私の叫び声が虚しく響き渡った……。

――――――――……
――――……
…………


「……で、何でこんなことになってるんだよ」
「あっれー? 、珍しく眉間に皺寄ってんな」
「A……何でお前がいるんだ」
「連れないな、俺たちの仲じゃん」
 そう言いながらに肩を回すA。
 それを渋い顔で振り払う
 諦めた表情で二人を見つめる私……。

 お祭りの入り口で、私たちは三者三様の表情で佇んでいた。

「それにしてもさ」
 Aがほぉっとため息をついた。
ちゃん……ヤバイね、その格好」
「え?」
「浴衣。似合ってるよ、すごく」
「え、あ……ありがと……」
 Aにでも、褒められたら嬉しい。
 でもどうせなら、にも何か言って欲しかったな。
 そんな思いを込めてを見つめると、彼はハッとしたように息を呑み、バツが悪そうに私に向き直った。
「ご、ごめん……俺、Aがいるとは思わなくて、何か色々気が削がれて……」
 は優しく微笑んで、私の肩へ手を乗せた。
「……似合ってる、すごく。すごく、可愛いよ」

 キャーキャー!!
 に可愛いって言われちゃった!!

 と、脳内で軽く小躍りしながら私は微笑んだ。
 浴衣で来て良かったぁ。



 そんなこんなで、とAは何か言い合いながら私の少し前を歩く。
 お祭りは物凄い人で、少し目を離したら、すぐ迷子になってしまいそうだ。

「それでさぁ、ときまほの静がさあ――――」

――――え!? 静!?

 私の横を、同い年くらいの女の子たちが楽しそうに笑いながら通り過ぎた。
 今、ときまほって言ったよね?
 静って言ったよ!?

「薫ちゃん、真っ黒だったよね!!」

――――か、薫ちゃんまで!!

 私はその子たちの話が気になって、一瞬後ろを振り返ってしまった。
 すると、そのタイミングで大勢の人の波が一気に押し寄せてくる。

「あ、!」
「え?! わっ」
「ちょ、何だこの人だかり!」
「あ、ふ、二人とも?!」

 人の波に飲まれた私たちは、バラバラになってしまった。
 幸い、通路から少し離れた所に出れた私は二人を探そうと目を凝らすが、それらしい人は見つからない。


 ヤバイ……はぐれた。

 試しにの携帯に掛けてみるも、一向に繋がらない。
 念のためAにも掛けてみたけど、これもまた繋がらなかった。

 どうしよう……

 迷った末に私は……

 境内へ向かってみる
 入口へ戻ってみる





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はい、ここからは現実世界verのSSとなります。管理人のターンです。何だか久々過ぎて、所々微妙と思われますが、生温かい目で読み飛ばしていただけると幸いです。
それにしても、夏祭りとかいいですね。彼氏と夏祭りとか行ってみたいものです。