「ちょっと飲み物買ってくるね」

 麻衣はそう言って、病室を後にした。
 何故病院にいるかといえば、義高と巴里が共に入院しているからである。大喧嘩の末入院するにまで至った二人には、もはや呆れ返るしかない。
 入院と言っても、全身打撲…と本当は軽症なのだが、警視の計らいで入院することになった二人。つまりは見せしめである。羞恥心を煽り、自分たちの愚かさを分からせるためのものだった。

 缶ジュースを三つ買いながら、麻衣はふと思う。
 そう言えば、あの二人が同世代の友達と騒いでいるのを見るのは初めてかもしれない…と。

 巴里は男女から人気があって、友達は多いようだったが……肝心な、同年代の友人というものを見たことがなかった。というか、プライベートな付き合いは正直よく分からないのだ。それは義高も同じ。二人とも友人は多いのだろうが、実際に見たことはないし、誰かと特に親しくしているわけでもなさそうだった。

「……実は結構、仲良くなったりしてね」

 そんなことを口にしながら、病室へと戻る麻衣。が、病室に入った瞬間買ってきたジュースを落とす。
「ちょっと……二人とも……!?」
「「アハハハハハハハハハッ!!!!」」

 麻衣の視線の先には、大笑いしている二人がいたのだ。何がそんなにおかしいのか。とにかく、涙を流しながら爆笑している二人は、明らかに異常だった。
「どうしたの!? 何があったの?」
「あははははっ、な、何でもないんだ! ただコイツの頭がおかしくて!! あはははは!!!」
「お、おかしいのはお前だろ!? ハハハハハッ、く、苦しいから笑わせるなって!! もうこっち向くなよ!! ハハハハッ!!」
「せ、先生! 看護婦さん!! 誰か来て下さいっ!! この人たち、何かおかしくなってるんですけど!!(汗)」


 二人が笑っていた理由を麻衣が知るのは、もう少し後。
 医師が安定剤を打とうと近付き、二人が必死に弁解した後だった。



☆オシマイ?☆



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