――――
3 years later………

「ちょっと! 離してって言ってるでしょ?!」
「いいじゃねえかよ、ちょっとくらい。ほら設楽、お前も手伝えっ!」
「……鳴海、いい加減にした方がいいんじゃない? その子、嫌がってる」
「うっせー! 女は皆、最初は嫌って言うもんなんだよ!」
「本当に嫌なんだって言ってるでしょ!! ばっかじゃないの!?」
「照れちゃってまあ、可愛いねぇ〜」
「はーなーしーてーーーっ!!!」
「はあ……鳴海って、絶対モテナイね」

 花街の一角。
 暗闇から漂う薔薇の香りに誘われて来てみれば……

「何やってるわけ?」
「ああ? 今取り込み中だって――――なっ……お、お前はっ……!!」

 懐かしい声と後姿に心臓が跳ね上がる。

「あらら。最近見てなかったけど……鳴海、お前の負け」
「くっ……ちきしょう!!」

 私は夢を見ているの?
 色鮮やかな、夢……。

「……ふぅ。まるっきり一緒だね、捨て台詞まで。これだから単細胞は困るよ」
「…………ゆ………め……?」
「フフッ……確かめてみる?」

 “黒く”澄んだ瞳が穏やかに揺らめき、少しだけ大人びた表情が甘く歪められる。

「……綺麗になったね――――
 
 私を呼ぶ声、この香り……。
 間違いない。
 間違いようがない。

「……ふぇっ……うぅっ……」
「あーあ……また泣く……だから何で、僕の前でだけお前は泣くわけ?」
「だってぇ……っ……ひっく……」
「……お前の泣き場所は――――ココ」
「っ……」

――――そして私はあの時と同じように
――――今度は差し出された腕の中に……

「…………ぁっ……」

 優しい微笑みに飛び込めるんだから――――






「ねえ……契約はもう……解消されちゃったよね……」
「確かに……利害一致の関係は解消されたね」
「……」
 俯いた私に、彼は何でもないことのように言った。
「ファウストとメフィストは、死ぬまで一緒じゃなかったっけ?」
「え……」
「――――というわけで、これからもお前は、俺たちにとって『生涯一人のファウスト様』ってことになってるんだけど…………ご不満ですか? マドモアゼル」
「っ…………大満足ですっ!!」





 吸血鬼<彼ら>の輪舞曲<ロンド>が終わりを告げても……
 私たちの輪舞曲<絆>は、きっとずっと終わらない――――。




fin


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