夢追人〜yumeoibito〜




 最初からこうなるだろうって思ってた。
 私は多分、翼を好きになる。
 大きな夢を追い掛ける姿を見て、彼を好きにならない方が無理な話だ。
 だから最初に翼を好きだと自覚した時も「あぁ、やっぱり好きになっちゃったんだ」と苦笑した。

 中学・高校と、彼とはずっと一緒だった。
 サッカー部のマネージャーとしても、友達以上恋人未満としての関係もずっと続いていた。
 彼は私以外の女の子を傍に置かなかったし、誰の告白も受けなかった。
 私はそれがとても嬉しくて、翼の「特別」になれている自分を心底誇らしく思った。


 そして高校の卒業式。
 柾輝たちに囲まれた私たちは、最後の記念写真を撮った。
 明日からは、皆バラバラになる。

 翼はスペインにサッカー留学を決めた。
 私はオーディションに受かり、歌手の卵として勉強させてもらえることになった。
 直樹や五助もそれぞれ進むべき道が見つかり、それに向かって進んでいく。

、翼。アンタらがいない生活なんて、考えられねえよ……」
「ふふっ、柾輝ってば寂しいの?」
「……かもな」
「フッ……柾輝はそんなキャラじゃないだろ?」
「悪い……」
 苦笑する柾輝に、翼は「……バカ」と呟いて、がしっと肩に腕を回した。
 そんな二人に覆いかぶさるように、直樹、ロク、五助が飛びつく。

「うわっ、アンタら何しやがる!!」
「いいやん柾輝ーv お前が寂しがっとる顔なんて、そうそうお目にかかれるもんじゃないんやしー?」
「あははっ、柾輝は可愛いねv」
「ったく……何言ってんだか……」
 直樹と私の言葉に、柾輝は溜め息をついた。
 でも、微笑を浮かべていた。

「あのー? 写真そろそろ撮っていいですか?」
 後輩の子が、困った声を上げる。
 私たちは慌ててそっちに向き直った。
「「「OKです!!!」」」
「じゃあ撮りまーす。ハイ、チーズ!!」

――――この写真は、私の宝物。



 そしてこの写真を撮った直後。
 私は翼と、恋人同士になった。
 6年越しの恋は、見事成就したのだった。




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