夢追人〜yumeoibito〜
3
最初からこうなるだろうって思ってた。
私は多分、翼を好きになる。
大きな夢を追い掛ける姿を見て、彼を好きにならない方が無理な話だ。
だから最初に翼を好きだと自覚した時も「あぁ、やっぱり好きになっちゃったんだ」と苦笑した。
中学・高校と、彼とはずっと一緒だった。
サッカー部のマネージャーとしても、友達以上恋人未満としての関係もずっと続いていた。
彼は私以外の女の子を傍に置かなかったし、誰の告白も受けなかった。
私はそれがとても嬉しくて、翼の「特別」になれている自分を心底誇らしく思った。
そして高校の卒業式。
柾輝たちに囲まれた私たちは、最後の記念写真を撮った。
明日からは、皆バラバラになる。
翼はスペインにサッカー留学を決めた。
私はオーディションに受かり、歌手の卵として勉強させてもらえることになった。
直樹や五助もそれぞれ進むべき道が見つかり、それに向かって進んでいく。
「、翼。アンタらがいない生活なんて、考えられねえよ……」
「ふふっ、柾輝ってば寂しいの?」
「……かもな」
「フッ……柾輝はそんなキャラじゃないだろ?」
「悪い……」
苦笑する柾輝に、翼は「……バカ」と呟いて、がしっと肩に腕を回した。
そんな二人に覆いかぶさるように、直樹、ロク、五助が飛びつく。
「うわっ、アンタら何しやがる!!」
「いいやん柾輝ーv お前が寂しがっとる顔なんて、そうそうお目にかかれるもんじゃないんやしー?」
「あははっ、柾輝は可愛いねv」
「ったく……何言ってんだか……」
直樹と私の言葉に、柾輝は溜め息をついた。
でも、微笑を浮かべていた。
「あのー? 写真そろそろ撮っていいですか?」
後輩の子が、困った声を上げる。
私たちは慌ててそっちに向き直った。
「「「OKです!!!」」」
「じゃあ撮りまーす。ハイ、チーズ!!」
――――この写真は、私の宝物。
そしてこの写真を撮った直後。
私は翼と、恋人同士になった。
6年越しの恋は、見事成就したのだった。