僕が迷い込んだのは、冥路。
二度と抜け出すことの出来ない、永遠の闇。
僕はどこで、選択を誤ってしまったのだろう……。
恐怖心
僕はやっぱり、津久井さんを捜すことにした。
彼女の安否が気になるし、そもそも何があったんだろうか。
「津久井さん!! 返事をしてくれ!!」
しかし、やはり彼女から返事はない。
――!?
僕はここで、嫌な想像をしてしまった。
それは、ここに殺人犯が潜んでいたのでは? ということだった。
さっき僕は、このメンバーの中に犯人がいると断言した。
それを覆すつもりは無いが、でもこんな部屋が見つかってしまっては、それも危うい。
もしここに、犯人が潜んでいて、密かに機会を伺っていたとしたら……?
そして津久井さんが、ソイツに襲われたのだとしたら……?
冷や汗が流れ落ちる。
心臓が、早鐘のように打った。
どうしよう……どうしよう……。
「つ、津久井さん……」
情けない声を上げた僕は、とてつもない恐怖心に駆られていた。
犯人。
殺人。
狂気、凶器。
様々な言葉が、頭の中を駆け巡る。
――グシャッ
ふらふらしていた矢先、何かを踏んづけた。
「な、何だ……?」
恐る恐る足元を確認するが、暗くてよく見えない。
手探りで確認しようとした僕は、そのものに触れた瞬間、絶叫した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああっ!!!!!!!!!!!!!」
そこには……大量の髪の毛が落ちていた。
「ひっ……」
尻餅をつきながら、髪の毛を手に後ずさる。
――怖い 怖い 怖い
僕の心は、完璧に恐怖に侵されていた。
声が上手く出せない。
ただただ、この場から逃げ出したい一心だった。
――トンッ
「え……」
背中が、何かにぶつかった。
壁とは違った感触。
まさか……
「や、やめて……助けて……」
振り向かずに、僕は言う。
きっと、聞き入れられないであろう、望みの言葉を……。
「うっ、うわぁぁぁぁ!!」
僕は無我夢中で暗闇を駆けた。
とにかくあの場から逃げ出すために。
「うっ、うわぁっ!?」
途中、何かに躓き、僕は転んだ。
それは、さっき落とした懐中電灯だった。
ぶつかった弾みで、灯りが点く。
床を仄かに、灯りが照らす。
うつ伏せになりながら、ライトの先を見つめる。
――足音が、近付いてくる……
「う、うあ……」
恐怖のあまり、身動きが取れない。
震えで、身体を起こすことができない。
僕の影が伸びている。
その先には、僕に近づいてくる影が……。
――足音が、止まる。
顔だけを上げ、ライトが照らした先に浮かび上がる、何者かを見つめる。
手には鈍く光る凶器……。
その顔を見た僕は、驚愕のあまり目を見開いた。
「そんな……嘘だ……」
呟きはすぐに、黒い闇へと飲み込まれていった。
二度と醒めないであろう、深い眠りが……
僕を待っている。
――終――
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はーい皆さん、こんにちは。そして残念です(おい)バッドエンドでございます。
いやー、何かもう、シリアスとか飛び越えて、いっそホラーものに転向したら? って感じですねぇ。
こんな微妙なとこで終わるエンドもどうかと思いますがね、あっはっは。まあ、これは最初この話を執筆した段階では考えてなかったエンドですので。
一応謎解きがメインの話なので、これも一つのヒントになるかと……。
是非是非、またチャレンジしてくださいね。貴方様のご来訪、お待ちしております。
真実は、いつも一つ……とは限りませんよ?
桜山荘総支配人