「縁!! 良かった無事で!!」
「義高君は……?」
「今来るわよ。お姫様を連れて」
「え?」
「どうも、無事生還いたしました〜」
「「麻衣!?」」
「ありがとう、義高……もう平気」
 そう言って麻衣は、僕から離れる。僕は、麻衣を支えながら歩いてきたのだった。
「麻衣、無事で良かったー!! しかも、何気お姫様扱いされてるし! 義高君が王子様って感じ?」
「もう華子! 私は死にそうな目に遭ったんだからね!! 茶化さないでよっ」
 秋山さんに、必死に弁解している麻衣。しかし、その顔が少し赤くなっているように見えるのは、僕の気のせいだろうか。
 しかし、この状況でそんな冗談が飛ばせる秋山さんには、ある意味敬服する。もっとも、それが彼女流の場の和ませ方だと知っているから、そう思うのだが。
 津久井さんが、麻衣に駆け寄ってくる。
「麻衣……無事だったのね」
「萌も……良かった!!」

 笑い合う二人を見て、改めて二人が無事だったことに心が軽くなる。
 もし二人のうちのどちらかが欠けていたら、この笑顔は見られないだろう。
 麻衣が無事で……本当に良かった。彼女を見つけ出せて、本当に良かった。
 今更ながら、膝からがくっと力が抜けた。安心したせいだろうか。
「義高!? 大丈夫?」
「いや……安心したら、ちょっと気が抜けて……」
「北林君、本当に王子様みたいに頑張ってたもんね。麻衣、彼には感謝しなくちゃ駄目よ」
 吉野さんが、麻衣の背中を押す。
 麻衣は「分かってる」と呟き、僕の傍へと戻ってきた。そして、隣に屈んで僕を見つめる。
「義高……あの、さっきも言ったけど……本当にありがとう。義高が見つけてくれなかったら、私……」
「麻衣……」

 バラードが流れ始めそうな雰囲気が漂い始めた瞬間――

「――これ以上いちゃつかないでくれるかしら? 麻衣、皆に迷惑掛けた分、この先の働きに期待してるからね!」
「ちょっと萌! 今スゴイいいところだったんじゃ……」
「何よ華子、私を差し置いていちゃつこうなんて甘いのよ。さあ、二人とも早く戻るわよ」
 津久井さんは、秋山さんを連れて先に行ってしまった。しかし、その後姿はとても嬉しそうだ。
 というか、いちゃついてるって……津久井さん(汗)
「……別にいちゃついてないんですけど。御礼言ってるだけなのに……」
 案の定麻衣が否定して、呆れたような声を上げた。
 僕も苦笑したものの、複雑な気分になった。いや、何となくだけど。
「……まあ、あの子も心配してたし、大目に見てあげましょ」
「……まあね。縁も、本当にありがとね。でも、縁と義高だったら、ある意味怖いものなしだったんじゃない?」
 麻衣が笑いながら言う。すると、吉野さんも笑った。
「そりゃそうよ。何たって私たち、クロス同盟だもん。ね? 北林君」
 悪戯っぽい笑みを浮かべ、僕にウインクを投げる吉野さん。

――どきゅーんっ★(胸を射抜かれた音)
(……び、美人のウインクは、殺傷能力抜群です……)

 射抜かれた胸を押さえながら、僕も笑う。というか、胸が痛い……。
「クロス同盟か……ははっ、ナイスネーミングだね」
「クロス同盟……? 十字架同盟? 何々? 何なの?」
 
 彼女の胸には金色の、端が欠けたロザリオ。
 僕のポケットには、少し曲がった銀の十字架。
 しかし、その輝きは失われることはない。
 僕らに信念がある限り……。
 
 頭から?マークを出しながら問う麻衣に、僕ら二人は顔を見合わせて笑い出す。そして、同時に言った。
「「秘密!」」









 今だけは、こんな穏やかな時間に浸っていたい。そう思う。
 この先に待つ、辛い現実と向き合うためにも、休息の時が、僕らには必要だった。
 麻衣はきっと、それが分かっている。そして、それを受け入れるだけの覚悟もある。
 悲しい真実と、偽りの幸福。
 この二つが混在する現実に、僕らは耐えなくてはならないのだ。
 全てを、明らかにするために……。

 麻衣の……そして皆の笑顔を、僕は守ることが出来るだろうか。
 様々な思いを胸に、僕は進む。真実へと……。




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*後書き*
 いかかでしたでしょうか、「魔女と一緒」篇は? ちょっと不思議な気分……いや、神聖な気分になりましたか?……なってるはずないですよね、すいません(llllll´▽`llllll) 桃井は勝手に魔女裁判萌え〜してました(ありえない)中世ヨーロッパって、スゴイ好きなんですよ私v 魔女とかもそうだけど、拷問とか、吸血鬼とか、伯爵とか色々。霧の都ロンドンなんて、ゴシックの代表ですよね??(あれ、違うか?) 薔薇とか、血とかそういうのに結構萌えです(笑)ちなみに、この魔女っ子美女は、実際のモデルがいますw 現在は真面目な金融ガールですが……。将来は、是非銀座に店を構えてくれることを、激しく希望していたりw まあ、キャラのことはいつかゆっくりと話せたらいいなーと思います。
 あと、今回キリスト教とか、十字架とか色々出しましたが、これ一切完璧な空想妄想フィクションです!実際のキリスト教徒様などで、不快な思いをされた方などいましたら、申し訳ございません。しかし、桃井は何も神を冒涜などする気は一切ございません。この世界の中でのこと、と割り切ってお楽しみいただければ……と思います。宜しくご理解くださいませ。