ときめいて☆魔法学園! 番外編〜2013 夏祭り〜




「じゃあ、久しぶりに花火でも見てみようかな」



こうして花火を近くで見るのは久しぶり。

花火会場なんて、混んでるし、熱いし、帰る時は人が多すぎて時間かかるし。
遠くから見る方が何倍も楽・・・とは言いつつ、やっぱり近くで見るのは迫力が違うんだよね。

優子と合流できなくなるのは嫌だし、人が多いところからは少し離れて見ていようか。

私は花火会場には入らず、比較的見晴らしがよく、お祭りの喧騒から少しだけ離れた広場に出る。
ここからでも十二分に花火を近くで見ることができる。



あぁ、この感覚。久しぶりだわ。
わくわくする気持ちを抑えきれず、思わず一人なのに笑ってしまう顔を必死で抑えこもうとしていると、不意に後ろから『きゃあっ』と女の人の声が聞こえた。

「わわ、すみません!」

見ると女の人の足につまづいてしまったらしい男の人が、必死に誤っている。

「あれ?」

「へ?あ、さん!」



なんか聞いたことがある声だと思ったら、野中先生だった。





先生は女の人に謝りつつ、私の隣まで歩いてきた。


「野中先生、相変わらずですね。」

「いやいや、恥ずかしいところを見られてしまったね。」


先生は照れているのか、ポリポリと頬を指で掻いている。


「先生も花火を見に来たんですか?」

「うん、たまたま近くを通りかかったら、花火が上がるということだったからね。思わず見に来ちゃったよ。」

ニコニコと笑う先生を見てると、こっちまで嬉しくなってしまう。

やっぱり良いなぁ、この人。


さんは?一人で来たの?」

「あぁ、優子・・・三村さんとお祭りの方に来たんですけど、今彼女電話しに行ってて。ちょっと暇をつぶそうと思ってこっちに来たんですよ。
どうせなら、やっぱり花火も見たいと思って。」

「そうだね。あまり頻繁に見れるものじゃないしね。家庭用の花火も風情があっていいけれど、やっぱり迫力が違うからね。」

「ですよね!私、花火が上がった時の、あの『ドンッ』って音が好きなんですよ。こう、お腹の中に響くというか。」

「ビリビリする感じが良いよね。」

「はいっ。これはもう、近くで見ている人しか味わえない特権ですよね!」

「ふふっ、そうだね。」


クスクスと笑いながら、先生は私の意見を聞いてくれる。あれ、ちょっと子供っぽかったかな。
少し恥ずかしかったけれど、いいか。


私はまだ子供だものと、開き直ることにした。






そんな話をしているうちに、花火が始まる。



ドンッ!!



ヒュ〜〜



パパパパパッ






キラキラと。

それはそれは大きな花たちが夜空に浮かんでは消えてゆく。

そのたびに、音が私の中で大きく響く。

そのたびに、少し不安になるのは私だけだろうか。



「先生、綺麗ですね。」

「え?」

近くで見れることが嬉しくて、思わず声をかけてしまったものの、あらら。

花火の音が大きすぎて聞こえなかったみたい。私はさっきより少し大きな声でもう一度言う。


「だから、花火綺麗ですね!」


先生はまだ聞こえていないらしく、少し私の方に屈んで「何?」という仕草をしてくる。
仕方ない。

私は少しでも先生に自分の声が聞こえるようにするため、ちょっと背伸びをして先生の耳元まで顔を近づけて言う。


「大きな花火、とっても綺麗ですね!!」


ああ、とニコリと笑って先生は


「うん、大好きだよ。」


と私の方を向いて言ってくれた。



が、



私はまだ背伸びをして、先生に顔を近づけていたままだったので。
気が付くと吐息がかかるほどの距離で、お互いを見つめあうことになっていた。


「「!!」」


私と先生は、目を見開き、ワタワタと慌てて離れる。


「す、すみません!」

「ここ、こちらこそ!」



あぁ、やってしまった!
恥ずかしくて先生の方まともに見られない。
こんなことなら無理して声をかけなきゃよかった。
私はどんな顔をしていいか分からず、とりあえず少し先生から離れようとした。



その瞬間―――



グイッと肩を引かれ、気が付くと私は野中先生に寄り掛かる形になっていた。


「え、先生・・・?」


訳が分からず先生の顔を仰ぎ見ると、彼は恥ずかしそうにしているものの、なにやら下の方を指さしている。


指された先をふと見てみると―――



そこには雑草ではあるけれど、小さな可愛らしい花が咲いていた。



「あっ」



再び先生の方を見ると、こちらをみてニコッと笑う。





その笑顔が



その心が




私の心を穏やかなものにしてくれる。


私の中の不安を消し去ってくれる。



私はまた先生の方を向き、少し背伸びをする。
先生もまた、少しだけ屈んで私の言葉を聞こうとしてくれる。



「大好きです。」

「・・・え!?」



思った通り。

やっぱり先生は私の顔が近くにあることも忘れて、またこっちを向く。

そして“しまった”という顔をして、慌てて顔を背けるの。


あたふたしている彼が可愛く思えてしまって。
しばらく見ていたかったけれど、流石にかわいそうかな。


私はグイッともう一度背伸びをして、


「花火のことですよ。」


と言ってあげる。


先生は、ほっとしたような、でも少し寂しそうな顔をする。




優しいこの人を困らせたくなんてないけれど。


意地悪だってしたくて。





少しくらいは許されるでしょう?

だって私は、子供だもの。




私の肩に置かれたままの手だって、気づかない振りしちゃうの。

だってまだまだ、子供だもの。


――――本編へ続く?――――




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■管理人の徒然な一言■
野中T! の前だといtきなり小悪魔MAXで攻めてくる主人公が好きです(´∀`) ドMなヒロインもいいですが、ドSなヒロインも好きです。好きなキャラ程不憫道を歩ませたい傾向があるので(笑)野中先生とヒロインの駆け引きに悶えますね。個人的には、野中先生の仕草は全部計算だと惚れるんですが、いかかですか青さん!!(笑)寂しそうな顔も、某キャラのように心の中では冷笑しつつ「フン、単細胞め」くらいに罵ってくれたら最高なんですが(゚ε゚ )あ、私だけですか。