あの後僕らは、全治1週間の怪我をそれぞれ負った。
 病院のベッドに転がる僕らに、麻衣が呆れ顔で言った。

「……貴方たち、一体いくつだと思ってるの?」
「「……」」
「もう、二人がいなかったら、特捜課はどうなるのよ。治ったら、ビシビシ働いてもらいますからね」
「ごめん麻衣……」
「悪かったよ。でも、悪いのはコイツだから」
「何だよ! お前が悪いんだろ!」
「元はと言えばお前がオレに、あんな得体の知れないジュース掛けやがったんだろーが!!」
「あれは不可抗力だったんだよ!! 大体お前は――――」
「病室では静かにしなさい!!」
「「……すみません」」

 飲み物を買ってくると言って病室から出て行った麻衣。その後姿を見送りながら、ベッドも隣同士の僕らは、お互いの姿を見て溜め息をつき合う。

「……お前、ミイラみたいだよ」
「お前こそ、どっか見世物小屋に出てきそうなおかしさだよ」
「はーあ……こんな喧嘩して怪我するなんて、何年ぶりだろ。ていうか、今までここまでの喧嘩したことないよ」
「オレだって無いっつーの。大体、素手で殴り合うのは趣味じゃないんだよ。指痛めるし」
「指痛めると困ることでもあるのかよ」
「ボクはお前と違って、色々高尚な趣味があるからさ」
「けっ。僕だって色々やってるしね! テニスにそろばんにタップダンスに……」
「ロイヤルスポーツなら一通りこなせるけど?」
「き〜〜〜〜〜! 悔しい〜〜〜〜〜」
「ぷっ……お前、ハンカチ噛むのキモイからやめろよ」
「うるさい! お前がハンカチ噛ませるようなこと言うからだろ!?」
「ぷっ……クククッ……」
「ぶふっ!! 巴里こそっ、その髪……!!」
「な、何だよ」
「寝癖でびょーーんってなってるよ! あははははっ、うけるーーーー!!」
「何だって!?……が…ホントだ……」
 髪の毛を撫で付けながら、悔しそうに唇を噛む巴里。その光景がまた笑いのツボをつき、僕は大笑いした。
「あははははははははは!! 何だか本当、巴里といると退屈しないな」
「……ホント不本意で不愉快窮まりないけど、同感だね」
「ぷぷっ……あははははっ」
「ククッ……ハハハッ」
 

 結局僕らは、麻衣が戻ってくるまでずっと笑い続けていた。
 そんな異様な僕らを見た麻衣が、蒼い顔でナースコールに飛び付いたのは言うまでも無い。



☆オシマイ?☆



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