閉幕〜将軍様のお膝元で〜



「よお、翼、
「「柾輝!!」」
 疲れて座り込んでいた二人の下に、将軍の腹心である柾輝がやってきた。
「ちょっと柾輝、お前今までどこに行ってたんだよ!? 主君がピンチの時に、傍に控えてない腹心って、一体どういうこと!?」
「まあ、そう怒るなって。お前らが騒ぎを起こしてる間に、捕えられてた女たちは全て開放したぜ。あと、杉原屋のことなんだけどよ……」
「よお黒川! それなら俺たちが報告するで」
 いつの間にか背後に立っていたシゲとノリック。二人は翼に向き直る。
「さっきはドタドタして言えへんかったけど、どうやら全ての黒幕は杉原屋で決まりやで」
「三上は、利用されてただけやったのかもしれへんよ。謀反の話も、けし掛けたのは杉原屋の可能性が高いんや」
「そうだったの?」
 慌ただしく動く奉行所の面々を眺めながらシゲが言う。
「さっきな、ポチがお上に証拠を渡したやろ? あれも、杉原屋の差し金だと俺は踏んどる。杉原屋は最初っから、こうなることを見込んでたんや」
「彼の屋敷を探ったんやけど、目ぼしいものは何も見つからんかったし……翼クン、杉原屋は一筋縄じゃいかへんよ」
「杉原屋、要注意ね」
 忍三人衆が真剣な表情を浮かべると、翼が笑った。
「ま、僕は何も心配して無いけどね」
「え?」
 不思議そうに問うに、翼は不敵な笑みを形作る。
「この江戸は、僕のモノだよ? 僕の領地で好きなことさせるわけないだろ。それにこっちには、御庭番衆っていうスゴイ奴らがいるしね」
 を含む忍三人衆は、主君を見つめる。
「……私、翼が主君で本当に嬉しいよ。私たちが、絶対に守るからね! 江戸も、翼も!!」
「翼クン、僕、今めっちゃ感動したで! これからも君のため、お江戸のために頑張るでv」
「何や姫さん、照れるわ〜。でも、姫さんの言葉にはきっと応えてみせるで。これからもうちらに期待しとってや」
 照れながらも、力強くそう応える三人。
「フッ……頼もしい限りじゃねえか、翼」
 柾輝の言葉に、翼は微笑んだ。






――――半月後、城下町にて。

ー!」
「おはよ、シゲ。今日はノリックは?」
「アイツなら、有希んとこで団子買っとるで」
「また? ホント、翼もノリックもお団子好きねぇ」
 とシゲは、城下町を歩く人々を眺める。
「最近はめっきり任務減ったのう。何や生活に張り合いがあらへん」
「それだけ翼が色々取り計らってくれてるんだよ。この前は、結局休暇にならなかったしね」
「まあな。しかもあれ、お目付けの差し金だっちゅー話やん」
「うん……どうやら玲ちゃんが一枚噛んでたみたいね。道理でおかしいと思ったのよ。あんな上手く事件に遭遇するなんて。しかも翼も一緒に、よ?」
「姉さんは、最初から俺たちに解決させるつもりやったちゅーことやな」
「全く……玲ちゃんってば……」

 溜め息を漏らす二人。
 すると、後ろから二人を呼ぶ声が聞こえてくる。

「おーい! 藤村、ちゃん!!」
「ノリック、おはよー……って、どうしたの、そのお団子の山は?」
「これか? これは有希ちゃんが二人にってくれたんやでv 城に持って帰って一緒に食おうや」
「わぁ、やった♪」
「丁度腹減ったとこやったんや。おおきにv」

 三人は団子を抱えて、城を目指す。
 道行く人は皆、楽しそうで。それを見た三人も、自然と笑顔になる。

「なあ、僕、最近ちょっぴり、任務が無い日々も良いかなって思う時があるんや」
「……そうだね。刺激が無い生活はつまらないって思ってたけど、こういうのんびりした日々も素敵だね」
「そうやな……ふぁぁ、それにしても、いい天気やー。昼寝でもしとうなったわ」
 欠伸をして、空を振り仰ぐシゲ。
 それに続くように、ノリックも空を見上げる。
「ホンマにいい天気やねぇ……快晴やー」 
「ふふっ、だってここは、我らが主君のお膝元だもんねv」



 将軍様とお庭番がある限り、此処江戸は、本日も天晴、天下泰平でございまする。



――完――




/表紙


 
以上で「天晴大江戸漫遊記!」は閉幕となります。長い間お付き合いいただき、誠にありがとうございましたvお江戸パロ、楽しんでいただけましたでしょうか?
 半年以上の時間を掛けてしまいましたが、最後まで完結できたことは皆様のおかげでございます。
 それではまた、どこかでお会いできることを祈って☆(ご感想などお寄せいただけたら、泣いて喜びますv)

2007/8/19 桃井柚


<Music by 煉獄庭園>