「あぁ……もうこんな時間かぁ……」
あの後は、今までの思い出話(?)を玲さん交えて語り合った。
私には初耳のことばかりで、聞いていて興味は尽きなかった。
史実と違う、生の歴史のようなものにも触れられた。
でも、一番はやっぱり 400年前の貴族時代の頃の皆の恋愛事情。これがホントに面白かった。
そして午前3時。
こんな夜更けだと言うのに、この花町は、眠ることを知らない街という名に相応しく、ネオンの光が目映いばかりに踊っている。
私たちは、玲さんを店の外まで送り出していた。同じ場所に長くいるのは、危険だそうで……。
私と翼は皆よりも数歩、前に出て話す。
「玲、お前はこれからどうするの?」
「早速薬を形に……と言いたいところだけど、皮肉なことに研究施設がなくなっちゃったから。材料も現段階ではすぐに調達するのは難しいしね。当分は、海外にでも行くつもりよ」
「そっか……」
俯いた翼に、玲さんが悪戯っぽく微笑む。
「あら翼。もしかして、私と離れるのが辛いの?」
「なっ……!?」
「うふふ、照れなくてもいいのよ? 何なら翼、私と一緒に行く?」
翼は呆れたようにため息をつき、大げさに肩を竦めた。
「バッカじゃないの?! 僕が寂しがってるだって? 自意識過剰なんじゃないの、玲。そんな台詞は、400年前にだって受け付けてなかったんだけど。それに――――」
翼は親指を立て、それをくいっと後ろに倒す。
「どいつもこいつもバカばっかりで、そんなこと考える暇すら無かったしね」
「まあ、翼ってば……ふふっ、良いお友達に恵まれたのね」
「……後は良いハトコに恵まれれば言うことなしだったんだけど」
「あら、じゃあもう言うことなしじゃないのv」
「……はあ」
二人の掛け合いがとても微笑ましくて、隣でそれを見ているだけで幸せな気持ちになる。
口とは裏腹に、翼はとっても嬉しそうだった。
「西園寺監督、お元気で」
「また会いましょう、皆。次会うのは、貴方たちが組織に潜入できた時かしら?」
「やれやれ……いつになるんやろ」
「あら吉田君、そんな未来のお話にしちゃうつもり? 私はもう、すぐに薬の原料集めに奔走するわよ」
「玲こそ、俺たちが研究所に入り込む時までに原料揃えて無かったら、どうなるか分かってるよね?」
「うふふっ……心得てるわよ。じゃあね――――」
そう言って、身を翻した玲さん。
しかし、彼女は振り返ると、私の耳元で呟いた。
「……あの子達を……翼をお願いね」
「玲さん……」
「貴女に頼みたいことはこれだけ。あの子たちの心を、救ってあげて……」
「……はい」
私の返答に満足そうに頷いた玲さんは、そのまま歩いていこうとする。
私は咄嗟にその腕をつかんでいた。
「玲さん。私にも一つ、お願いがあります」
「……ええ、何かしら?」
「兄を……どうか宜しくお願いします。ふふっ……お兄ちゃん、実は私がいないと寂しくていられない人ですから」
「くすっ……分かってるわ。任せてちょうだい」
「それと……『私はお兄の妹だってこと、誇りに思ってる』……そう、伝えてもらえませんか?」
「……了解。……ちゃん、元気でね」
「はい、玲さんも……」
そう言って去っていく玲さんの後姿を、私はいつまでも見送っていた。
兄と翼と玲さん……そして私。
血の繋がりがあるわけではないけれど、深いところで繋がっている……そんな気がした。
「……」
振り返ると、いつの間にか翼一人になっていた。
「翼……他の皆は?」
「ああ……そろそろ夜明けだからって、店の中入ったよ。ったく……」
「あはは、体質まで吸血鬼になっちゃってるね」
「笑えないって……」
そう言って笑った翼。
もうその笑顔の中に、兄の面影は見えなかった。
「……いいの? 本当に会いに行かないで」
「ああ……」
「目と鼻の先にいるのに?」
「……旅のメンバーが一人増えることになるよ?」
「あら、私は別に構わないけど?」
「冗談言うなよ。アイツを危険な目に遭わせられるわけないだろ」
「……もう、既に危ないかもしれないわよ?」
「!?」
「……あそこは狼……もとい、悪魔の巣ですもの。可愛いお姫様を置いておくには、ちょっと心配だったわ」
「…玲さん、それって……!!!」
「うふふ……彼女、吸血鬼たちの聖女<マドンナ>みたいだしね」
「……アイツに手出したら、即地獄に落としてやるよ。ま、青薔薇のキングだけは大丈夫だと思うけどね」
「……翔君、ナイフしまいなさい」
「っくしゅん! ……うぅ、何だ? 俺様は風邪なんて引かないはずだが……」
「馬●は風邪引かないって言いますもんね」
「誰が馬鹿だ! 誰が!!」
「伏字にしたのによく分かりましたね」
「分かるに決まってんだろーが!!」
「タ、タクってば……誰かが三上先輩の噂してるんじゃないっすか?」
「フッ……俺様が素敵だー! とかカッコイイとかだろうけ――――うおぉっ、何か今、とてつもない寒気が……!!」
「……誰かの怨念が三上先輩の背後に見えますよ」
「な!? 笠井、不吉なこと言うんじゃねえよ!!」
「そ、そうだよタク!! 怖いこと言うなよ〜!!」
怨念は、吸血鬼よりも強し……。
当分の間、彼女に手出し出来る吸血鬼はいないようである……?
To be continued......Final Part?
はい、怒涛の展開でお送りしました第三部。これにて終了でゴザイマス。どうでしたかね?もう桃井は息切れしてます(笑)でもこれで謎という謎は全て解けたと言っても過言ではありません☆あとはヒロインと協力して、薬を作り出し、兄たちと元の生活に戻るだけってことですvvvそして様、ついに兄の面影から抜け出ましたね!!翼の中に兄を見るのをやめることが出来ました。おめでとう!!(笑)これがこの物語で書きたかったことの一つなんですよね。兄離れする妹ってやつ。ま、兄貴の方は全然妹離れできてませんが……(苦笑)
さて、吸血鬼輪舞曲、いよいよ次回より最終部がスタートとなります。完結の章ですよ?長かったですね……ホント。更新はめっちゃ遅くなってしまうかもですが、どうぞ最期までお付き合いいただければ幸いです。ではでは(llllll´▽`llllll)