◇舞台裏、製作秘話!?◇
――カーット!! クランクアップです、お疲れ様でした!!
『はーい、クランクアップよ! お疲れ様、、皆』
にっこりと笑みを浮かべて手を振る西園寺に、役者の面々は疲れた様子で集まってきた。
中でもは、人一倍疲労しているようだ。
「お疲れ様です……はあ、一時はどうなることかと思ったけど、何とかまとめられて良かった。英士、本当にありがとう! ラストの『シンデレラ』は原作とは違っちゃったけど、素のままで演じられたし、すっごい楽しかった」
そう屈託の無い笑みを零すに、英士も微笑む。いつもとは違う、心からの笑みだった。
「ま、これくらいならどうにでもなるよ。それに、元々の話より、このラストの方が俺は気に入ったよ」
「えへへ。皆で創った、オリジナルの『シンデレラ』だね! 公開が楽しみだなー♪」
今回の映画のタイトルは『童話でホイッスル!』。
「白雪姫」、「眠れる森の美女」、「赤頭巾」、「人魚姫」、「シンデレラ」の五本立てだ。
配役は全てくじ引き。ヒロイン役は全てがくじで引き当てたが……このくじを創ったのは西園寺玲。この意味、お分かりだろうか?
「あれだけ痛い目に遭わされたし、本気で殺意を抱いたりもしたが……まああれだな。あのラストで、俺たちの苦労も幾らか報われたな……」
「ああ……何だかお前とも、今回は心が通じ合った気がするよ……」
「同感だ……」
しみじみと語るのは、三上と水野。二人は脇役という共通の立場を通じて、何かを得たようだ。
人は、窮地を共に乗り越えると、絆が生まれるのである。
「ちゃーん! お疲れーv」
「お疲れ様です、先輩」
「お疲れ様、二人とも」
「ラストは、予想もしない展開でしたけど、すごい良かったと思いますよ」
「うんうん! ちゃん、すごい自然体だったしねv」
「竹巳、誠二、ありがとう! 皆で試写会は来ようね」
皆、オリジナルのラストをとても気に入っているようで、は安心した。もっとも、納得していない面々もいるのだが……。
「おい、」
「あ、柾輝。お疲れー」
「お疲れさん。翼とあの関西弁、あのままほっといていいのか?」
「……私に止められるはずないじゃない」
「……確かに。でもまあ、金髪はともかく、翼はこのラスト、絶対納得しないぜ?」
「元はと言えば、翼とシゲが悪いんだもん。私たちは被害者ー」
「まあな。ま、フォローはしといてやるから、それ以降のアフターケアは頼んだぜ」
「あ、ちょっと柾輝……」
は溜め息をつき、腰を下ろす。すると、頭を軽く叩かれた。
「よっ、。お疲れさん」
「結人、お疲れ様」
「、主役なんて羨ましいぜ。俺なんて、今回効果音だけ。マジありえねーよなー」
「ぷっ……あはははっ」
「なっ、笑うなよー! あれだって、立派な役なんだからな」
「分かってるよ。誰か欠けたら、芝居にならないもんね」
「そそ。そーいうことv」
にかっと笑う結人に、もつられて笑った。ふと見ると、結人の横には、青い顔の一馬がいる。
「一馬……大丈夫?」
「……お疲れ……」
「どうしたの? 一馬」
「あはは、こいつ渋沢見て気絶したんだよ。ナイーブだから、ショッキング過ぎたみたいでw」
「ゆっ、結人! 余計なこと言うなよ!!」
「あはは……あれは一馬じゃなくても、気絶するわよ……」
そう言えば、克郎はどこへ行ったのだろう?
そう思ったが辺りを見回すと、包帯グルグル巻きの、ミイラ男宜しくな姿を発見する。
「かーっつろ!」
「! お疲れ様」
「克郎もお疲れ様。ていうか体、大丈夫??」
「ああ、これくらい何てことはないさ。ハハハ」
「……本当に平気なのかしら」
苦笑いを浮かべるに近付く影×3。
「、お疲れ」
「お疲れさん、ちゃん」
「お疲れ、。まだアイツは、喧嘩しとんのか?」
「お疲れ様、燎一、光徳、直樹!」
不思議な組み合わせかもしれないが、この三人、実はプライベートでも仲が良いらしい。
大人しい天城に、騒がしい直樹。間に光徳が入ることによって、絶妙なハーモニーが生まれるらしい……!?
「、今度四人でカラオケ行かへん? めっちゃ歌いたい曲あるんやわー」
「いいね、行きたいv 燎一もカラオケとかって行くの?」
「いや、俺は……」
「何つれないこと言うてんの〜。僕ら友達やろ? ちゃんかて来るんやし、来ないと損やって。な?」
「そうだよー! 私も燎一の歌、聴きたいーv」
「……わ、分かった」
「「わーいv」」
「お前ら、何やガキみたいやの〜……」
「直樹はおサルさんだけどねv」
「せやねw」
「な、何やて〜!!」
「……ぷっ……はははっ」
「あっ、天城! お前何笑っとんねん!!」
仲睦まじく、じゃれ合う四人を見つめる二人組。風祭将と杉原多紀の二人だ。
「いいなーあの四人。仲良いよね」
「そうだね。天城も、ああやって笑うようになったんだな……良かった」
そう言って、嬉しそうに笑う将。そんな将に、多紀も微笑む。
「ねえ将君。僕らも混ぜてもらわない?」
「うん、そうだね! おーい、さーん!」
「あ、将君! 多紀ー!」
笑顔で手を振るの元へ、二人は駆けていった。
「じゃあ、カラオケは今度の日曜ってことで決まりね☆」
「おっけー! 、俺の歌聴いて、惚れても知らへんでーv」
「だーれが惚れるって? が? 直樹に? 何夢の話してんだよ」
「「翼!?」」
いつの間にかお帰りになっていた姫こと翼。とてもご立腹の様子。
「翼ってば……やっと帰ってきた」
は翼に駆け寄ると同時に、軽くその頭にチョップ(!?)した。
「いてっ」
「――撮影に迷惑掛けた分の制裁。翼らしくなかったよ、さっきのシンデレラは」
「あのたこ焼き野郎のせいだよ。僕のせいじゃないね」
「もー、おかげで新たなエンディングが創作されちゃったよー」
頬を膨らませて怒ってみせるに、いつもなら逆切れする翼も、怒るに怒れない。それどころか、頬が緩んでくる始末で、ついには苦笑し出した。
「あー、翼! 全然っ反省してないわねー!」
「フフッ……悪い悪い。お詫びに、お前のお願い一つだけ、何でも聞いてやるよ」
「え!? 嘘、いいの!?」
「ああ。迷惑掛けたのはホントだしね。ほらたこ焼き野郎。お前もに謝れよ」
「姫さん、分かっとるって。、ホンマにすまへんかった。堪忍やわぁ。お詫びに、シゲちゃんにも何でも一つだけお願い事してええで」
「えー、えー……どうしようかなぁ」
悩む。その姿に、ここにいた少年たちは皆、心を奪われていた。
「「「「「可愛い……」」」」
そして……
「よしっ、決めた!」
「何にしたの?」
「何でもええでv」
「じゃあね、まずは翼にお願いね。日曜のカラオケで、タッキーと一緒に『タッキー&翼』に成り切って、『夢物語』『ヴィーナス』を熱唱してvvv」
「はぁっ!?」
「え? 僕も……!?」
あまりのことに、驚く翼と多紀。でも、はにっこり笑うだけ。
「タッキーは形だけでいいから☆歌いたくなければ、翼がぜーんぶ歌ってくれるだろうしv 前々から、思ってたのよねぇ。タッキー&翼が出来るじゃんって!」
「……マジで?」
「うん。マジ。大マジよvvv」
「……」
がっくりと肩を落とす翼に、周りが同情とも言えぬ視線を送る中、の視線はシゲへと注がれ……シゲは、冷や汗を流して後ずさる。
「ええっと……ちゃん…? 俺は一体、どんな×ゲームやらされるのやろーか……?」
「シゲはねぇ……」
は、にっこりと笑うと、静かに言った。
「たこ焼き&お好み焼きを、ここにいる全員が満足するまで作り続けてv」
シゲは顔面蒼白にしながら、を見やる。
「そ、そんなー!? それマジ酷い仕打ちやで!? いくら俺でも、ちょっと厳しいわ!!」
しかし、はしれっと言い返す。
「シゲの嘘つきー。男のくせに、約束破る気?」
「うっ……そ、そういうわけやない……けど……」
「シゲ……お・ね・が・いv」
「うぅ……凶悪やわ……」
惚れた女にそんな可愛くおねだりされて、断れる男がいるだろうか。シゲは涙を呑みながら、うずくまった。そんなシゲを見ていた周りのメンバーは、同情はしつつも、助ける者はおらず。自業自得と思っているようだ。
「……なーんてね。シゲ、嘘だよ」
「え……」
驚いて顔を上げたシゲに、は優しく微笑んだ。
「シゲも、特別に『w-in●s.』になりきり☆の刑で許してあげるv」
「w-in●s.って、三人組のダンスユニット……?」
「そーそ! ま、メンバーは光徳、直樹と組むってことでv あ、ちなみにボーカルのケイタは光徳ね! コレ指定v」
「えー?! ちゃん、僕らもやんの??」
「いーじゃないv 光徳、絶対歌上手いもん!! 直樹はラップかなー? わーい、楽しみー♪」
「……しゃあないな。ほら、ノリック、サル。日曜のお披露目に向けて、今から特訓やで!」
「「マジかいな!?」」
「あはははっ、よろしくねー☆」
笑顔で見送るに、周りは苦笑とも取れる笑みを浮かべる。
「……は最強無敵だね」
「確かにな……」
「ーっ、サイコーだぜw」
U−14の呟きに、誰もが頷くのであった。
「おい」
突然の声に振り返る面々。
「大地、どうしたの?」
「監督がお前たちを呼んでいる。次の作品の打ち合わせだそうだ」
「え!? もう次の話ー!?」
不服そうな声を上げるに続き、皆が不満の声を漏らす。
しかし、西園寺が笑顔で近付いてきた瞬間、誰もがぴたりと静まり返る。
「さあ、皆。次の作品の打ち合わせをするわよv」
「「「「はい……」」」」
<西園寺玲。
この数式が覆されることは、未来永劫あり得ないのだった。
fin
戻る/目次
童話でホイッスル、いかがでしたか? ま、こういう裏があったんですねーハイ。次回作は、昔話シリーズにしようか、全然違う毛色にしようか迷い中。
ではでは、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。是非、ご意見ご感想などお寄せいただければ、と思います。
桃井柚