序章 「telから始まるミステリー」





――
pururururururu pururururururururu prurururu・・・

 部屋の電話がけたたましく鳴り、書類に目を通していた手を止める。
 ふぅっと息をつき、鳴り続ける電話を取る。

「砂原ですが」
「警視、内線5番でお電話ですが、お繋ぎしても宜しいですか?」
「構わないが……誰かな?」
「……多分、――――かと……。口調だけで判断させていただいているので、定かではありませんが……」
「名乗らなかったのかい?」
「それが、どうも電波が悪いようで……英語でお電話されているので、余計聞き取りずらいんです……」
「英語……?」
「ロンドンからの国際電話として承っているので、多分私の推測で合っているかと……」
「! それなら確実だね。ありがとう。すぐに回してくれ」
「かしこまりました」


――
pururururururu pururururururururu prurururu・・・


 ほどなくして、もう一度電話が鳴る。
 込み上げてくる期待に自分でも苦笑しながら、落ち着いて受話器に手を伸ばした。

「はい、砂原ですが……」

Hello? Long time no see(ハロー、久しぶり)
「……
Yeah, too long.」(ああ……本当にな)
 聞こえてきた流暢な英語に、微笑みながら返答する。
 懐かしい……丸一年ぶりに聞く声。
Actually, I could have returned to Japan.(実は、日本に帰れることになったんだ)
「……
Really?(本当か?)
I am true.(ああ)
「……
I am glad to be workable again together with the front,
 『また一緒に働けて嬉しい』と伝えた砂原に、容赦ない一言が突き刺さる。
To work with you is unpleasant.」
「…………フフ……」
 『こっちは嬉しくない』とぴしゃりと言い切った相手に、苦笑とも溜め息ともつかぬ声を漏らす。
 こんなやり取りも一年ぶりで、それすらも懐かしく感じるのだがとりあえず、相変わらずだな……と返しておくことにした。
「……
You remain the same.」
「――――
Now, I sometimes want to ask you.(それで、ちょっと頼みがあるんだよね)
 挨拶もそこそこに本題に入る相手に、またも苦笑する。
 勘を働かせ、砂原は先を促す。まあ、一つしか思い当たらないのだが……。
What? Is it the section which you are assigned to? Let's arrange for it beforehand. If deciding a section where you want to enter, give me a contact.」(何だい? 配属される部署のことか? それならこちらで手配しておこう。入りたい部署が決まり次第連絡をくれ)
「……
Already, I decide the section which wants to enter.」(実はもう、既に決めてあるんだよね)
「……
Where is it?(どこだい?)
 この問いかけに、砂原の電話の相手――――は、意味深な笑みを浮かべる。そして、その笑顔のまま言った。

「――――
The special investigation department☆」

 語尾に☆が付いたのを、電話越しに感じた砂原はもまた…………それによく似た笑みを浮かべる。
「フフフ…………特捜課ね」
I ask well?(よろしくね?)――――砂原雅輝警視」

 最後、これまた流暢な日本語で砂原の名を紡ぐ電話の相手。
 切られた電話をしばらく眺める砂原は、悪戯を考えた子供のような瞳を見せて微笑んだ。



――――そう。
 この会話が、ある人物達の運命を大きく変えるのだということに、彼らは既に気付いていたのだから――――。





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 ついに、『探偵乱舞』の続編、続・探偵乱舞、略して続探の開幕です。いやはや……。
 今度の探偵乱舞は、前作とはまるっきりテイストチェンジをしております。推理小説改め、アクション・ラブコメ!?
 引き続き、ギャグ満載でお送りいたしますがv 宜しければお付き合いくださいませ!