第5章〜闇夜への誘い〜



 義高が無事だった。

 縁も無事だった。

 私の不安は杞憂に終わったのだろうか……。


 私は今、自分の部屋にいる。夕食まではまだ時間があるようなので、部屋でゆっくりすることにしたのだ。まあ萌と相部屋だけど。

 二人で使うにしてもこの部屋は相当広い。おまけに窓から見える景色は最高で、ホテルのスイートルーム並みの豪華さだった。ちなみに今萌は、須山達と談話室にいるみたいだ。

 実は今私は、華子に義高の件を交渉してきたところなのだ。もちろん華子は二つ返事でOKしたが……そういえば華子今フリーだっけ……
 
 義高と言えば、また道に迷ったなんて本当に天才的な方向音痴だ……と思いつつやっぱりすごく安心した。無事で良かった。

 縁も列車の故障で遅れたらしかった。肌が相変わらず水色だったけど……。

 私がそんな事を考えていると、「コンコン」と誰かがノックしている音が聞こえた。

「はい? どうぞ」

「失礼します。麻衣、ちょっといい?」

 義高だった。

「どうしたの?」

「いや、なんか居場所なくて……」

「あっ、そうだよね……ごめんごめん」

「いや、全然っ」

 私は義高が、みんなと面識が無い事をすっかり忘れていた。というか、二人が無事だった事で気が抜けてしまっていた。

「義高! みんな歓迎してくれるよ。もっと気楽にくつろいで!!」(かなり他人事)

「うん。ありがとう」

「それに私たちはもうすっかり友達でしょ?」

「ああ。そうだね」

 どうやら義高の緊張も少し解けたみたいだ。まあうちの部活はしょっちゅう知らない人来てたし、そんなんでぐちぐち言う奴なんていないと思う。(言ったらぼこす)

 その後も何気ない話をしていた私たちであったが、私はふと思い出した。義高の桜山荘に行く理由だ。

 ずっと気になっていた……。私は切り出す。

「ねえ、ずっと気になってたんだけど……何で桜山荘に行くの?」

「えっ?! いや、あの……その……」

 やっぱり義高は何か隠している。おまけに私の勘では、かなりやばいことのようだ。

「ねえ、何で??」

「えっと……その――」

「麻衣〜!! 御飯だよ――っ!!」

 私が問い詰めようとした時、いきなり扉が開いた。

「えっ……華子……?」

「あ、秋山さん……?」

 私たちは呆然と華子を見つめた。華子は何故か口を金魚のようにパクパクさせている。

「ま、麻衣……義高くん……二人ってもう……そんな……?!」

「「はっ?」」

 二人で同時に言った後、私は自分の血の気が引いていくのを感じた。


 自分の格好――浴衣。

 義高――浴衣。

 そして私は義高に半分身を乗り出して(というか胸倉掴み、義高の浴衣を肌蹴させ)問い詰めていた……。


「あの……華子……」

「秋山さん……これは……」

 華子は満面の笑みを浮かべて言った。

「邪魔者は退散しますんで、後はごゆっくりぃ〜! てか麻衣、アンタがそっちのタイプだったとは、初めて知ったわ!」

 華子は踵を返すと、そそくさと走り出した。

 ……絶対みんなに言いふらすつもりだ!!

 私と義高は、走り去っていく華子に向かって青ざめながら叫んだ。

「「誤解だ〜っ!!! υυυ」」

 てか私は攻めじゃないわー!!(どうでもいい)