――はいカットー!! クランクアップです! お疲れ様でしたっ!!

 スタッフの、明るい声が響く。
 この声を皮切りに、一斉に歓声が上がった。

「お疲れーっ!! はぁ、長かった〜っ」
「一時はどうなることかと思ったけど、何とか演じきれてホント良かったわ……」



 今日は、来年春に上映予定の映画『探偵乱舞シリーズ〜桜山荘殺人事件〜』のクランク・アップの日。
 そして今まさに、その瞬間を迎えたところ。
 以下、週刊『妄想アカデミー増刊号』の紹介文である。





 『探偵乱舞シリーズ』とは、原作の小説『探偵乱舞』が人気を博し、その後映画化、アニメ化、漫画化と、様々な広がりを見せる作品の一つである。
 映画版は今回で3作目となり、この3作目は、前2作品よりも前の話、主人公二人の出会いが舞台になっている、いわば回想篇。しかし、急展開やギャグ混じりのあり得ない推理はもちろん健在だ。

 今回主役を務めたのは、これまたお馴染みの二人。 岡野麻衣と北林義高である。
 二人は、当シリーズが初主演となっており、3作目となった今回も抜群のコンビプレーを発揮。まさに、相棒という間柄になっているようだ。二人は年も同じくして芸能界に入ったこともあり、プライベートでも親しいという。

 岡野は最初にこの役を受けた時の心境をこう語っている。
「最初は、まさか自分が主役をいただくなんて、信じられませんでしたね。しかも、原作も読んで、大ファンだったので…まさか!という感じで。でも、すごく良い経験になると思ったのと、純粋に推理モノに惹かれたので、やらせていただくことに決めました」
 彼女自身、大の推理小説マニアで、赤川次郎・有栖川有栖などは読破しているそう。そんな彼女にこの役がきたのは、まさに願ったり叶ったりだったであろう。

 次に、もう一人の主役。北林のコメントはこうだ。
「最初聞いた時は、嬉しくて小躍りしたくなりました(笑)いや、本当に。僕は、桃井先生の作品が大好きだったんです。しかも、そこに出てくる主人公が、すごく自分と重なるところが多くて。あ、変な意味じゃないですよ? 頑張りすぎて空回りしてしまうところとか、場違いなことを考えてしまったりとか。だから、すごく親しみやすかったんです。返事? もう二つ返事、その場で『是非お願いします!!』って答えました。それくらい嬉しかったですね」
 嬉々として語る彼の表情は、本当に幸せそうだ。


 そんな彼らも、この作品に出演してもう三年目。
 世間には、探偵と刑事のコンビと言えばこの二人!となるほど板に付いた役者ぶりを見せている。
 そんな二人に、今回の見所を聞いてみた。

岡野「私としてはやっぱり、親友萌との掛け合いですかね。ギャグの部分とシリアスな部分。色々な葛藤が表現できてたらいいなぁと思います。あと、個人的には相方クンのボケっぷりが、相変わらず面白かった(笑)」
北林「あははは、役作りですから(笑)僕的には、ラストですかね。詳しい話は控えますが、最後はホント、驚きって感じの結末になっているので、それに翻弄される僕たちが一番の見所だと思ってます。でも、全部が見所ですけどね(笑)」

岡野「全部!(笑)でも、確かにそうかもしれません」



 インタビューにも、笑いが絶えない二人。そこで、いくつか質問してみることに……・

――お二人は探偵、刑事という役柄を演じているわけですが、実際にそういった職業を目指したりしたことはあるのですか?

岡野「実は、刑事に憧れていたので、公務員試験を受けようかどうか迷いました。でも、色々考えた末、役者の道を選ぶことに決めたんです。今となっては、役者を選んで良かったなぁと思ってます。役者なら、色々な職業を疑似体験できるので」
北林「めちゃめちゃ目指してました(笑)大学では法学を専攻していて、ゆくゆくは弁護士か検事になるのが夢でした。でも、知り合いに役者の卵をしている方がいて、その方の影響で芸能界への道を目指すようになったんです」


――演じていて、苦労したことなどは?

「毎回の撮影が、苦労の連続です(笑)ギャグとシリアスを使い分けるのが、意外と難しいんですよ。あとは、推理場面。あの緊迫した空気の中で、いかに冷静かつ端的に話せるかが重要なので、とても緊張しています。でもその分、本当に自分が事件を解決している気分になれるので、気分が良いですけど(笑)」
「あー、それすっごくよく分かる!! 僕も、今回はそこまでの推理部分は無かったけれど、前作ではかなりしんどかった。ただ、この作品はW主人公制だから『一人じゃない』っていう安心感があるよね」
「確かに! 二人一緒に事件を解決していけるっていうのは、この作品の魅力だと思う。あとは、空気にそぐわないギャグが突然出てくるところ(笑)」
「ギャグは本当に面白いよね(笑)改めて、桃井先生の力量を感じさせられましたよ(苦笑)」

――かなり親密になってきた主人公の二人ですが、今後の二人はどうなる?

「うーん……中々難しい質問だ(苦笑)答えは私たちも知らない……よね?(笑)」
「うん。全ては桃井先生次第だし(笑)でもさ、実際気になるところだよね。……どう思う?」
「私に振るか?(笑)まあ……アレですよ。やっぱり、二人は相棒なんだし、これからも、ずっと一緒に頑張っていってほしいって思います。愛情か友情かは別としてもね(笑)」
「そうだね。僕も、最高のパートナーに相応しい二人の活躍を、これからも追っていけたらいいなあと思ってます! 友情:愛情は五分五分の比率で(笑)」
「何じゃそりゃ(苦笑)」

――では最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

「皆さん、今回の『探偵乱舞』は、すっごいハラハラですよ! もう一瞬たりとも見逃せないです! 私も今から公開が楽しみで楽しみで。是非、見ていただきたいと思います」
「春は皆で『探偵乱舞』という感じで(笑)、映画館へ足を運んでいただけたら嬉しいです。宜しくお願いします!」


――質問は以上です。どうもありがとうございました。




*インタビューを終えて*
 二人とも、映画の役そのままな印象で、とても和気藹々としていた。時々起こる笑いや、ボケ突っ込みは、本当に映画の中の二人を見ているようだ。
 岡野と北林は、プライベートでも一緒に遊ぶほど仲が良いともっぱらの評判で、交際が噂されているが真偽のほどは謎。二人の様子を見ている限りでは、そのようには見受けられなかった。本当に「相棒」という呼び名が相応しいと感じた。
 二人は今後、舞台の方に力を入れていくという。『探偵乱舞』は3作目となるが、実は続編の声を上がっているらしく、4作目も検討されているらしい。この辺りは、二人の今後の活躍次第といったところか。とにもかくにも、今後の二人の活躍に期待したい。(文:ももい 柚)



『探偵乱舞〜桜山荘殺人事件〜』◇もう一つの結末篇――完◇

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……こんなオチでした。つまりは、映画オチ(笑)でも、これならアンハッピーとは程遠いですよね。当初は、義高篇の最終章に考えていたりしたので、こんな形で使えるネタで、良かったです。ではではこれにて、サクラ、完全閉幕――。