終幕〜焦燥感〜
「犯人は……貴方だ!!」
「!?」
僕はその後、推理を披露し続けた。
しかし、皆はそれには納得してくれなかった。
麻衣も、「え?! 違ったの……?」と頭を掻いている。
事件は全て、振り出しに戻ってしまった。
もう一度最初から考え直す必要に迫られた僕たちは、皆の軽蔑した視線から逃れるように、二人で部屋に逃げ込んでいた。
そうこうしているうちに、警察が到着。
大塚先輩の指示の下、僕たち生還者は、無事全員が保護された。
そしてその後、何と犯人が発見されたのだ。
旅館の影に、潜んでいたところを、調査中の警察官により逮捕された。
無職の男性で、記憶が混乱しており、精神が病んでいるとのこと。
手に、凶器のナイフを握り締めており、半狂乱で犯行を認める言動を繰り返していたため、警察は彼を犯人だと断定。
外部の人間の犯行――と締めくくられたのである。
しかし、僕はどうにも腑に落ちない。
本当にそうなのだろうか。
外部犯ではないのでは?
しかし、今更何を言っても遅い。
僕たちは間違えてしまったのだから……。
何を言っても、誰も聞いてくれないのだ……。
帰りの車の中、僕は一人考える。
真犯人は、多分僕たちの中にいるのだ。
しかしながら、手がかりを失った今となっては、もはやどうすることも出来ない。
僕たちは一体、何を間違えてしまったのだろうか……。
隣で疲れて眠る探偵を見つめ、複雑な気持ちになる。
彼女との推理は、間違っていなかったはずだ。
おそらく、最後の最後で、何かを読み間違えてしまったのだ……。
やはり、彼女を信じて任せていたなら……
後悔の念でいっぱいの胸を押さえる。
意味は無いと分かっていても、そう思わざるを得ない。
そうでも思わないと、この釈然としない気持ちを抑えることが出来なかった。
死神は一体誰だったのか?
どうして皆は、殺されなくてはいけなかったのか?
犯人は?
動機は?
橋から落ちた、佐田たちの行方は……?
様々な思いと疑惑を胸に、車は東京へと進んでいく。
今、こうしている間、僕たちの中の誰かが……してやったりという笑みを浮かべているのではないか?
まだ、犯人の思いは遂げられていないのではないか。
こうしている間にも、次の殺人の計画を練っているのでは……?
そして……
次の標的になるのは、もしかしたら…………
そんな思いを、僕は捨て切ることが出来なかった。
僕たちは一体、どうなるのだろうか……。
――終――
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●ひとこと●
あらら……残念。犯人を読み間違えてしまったみたいです。もう一度、犯人を洗い出してみてください。今度こそ、真相に辿り着けること、祈ってますよ★
でも、個人的には、こういった謎めいた終わり方が、結構好きだったりします。謎は謎のまま終わるのも、ミステリーの醍醐味かと(勘違い)
真相を知ること全てが、幸せな結末だとは限らないのですから……。