チャラララ〜


―――へっへっへっ・・・てさすがに怖いか

「お前ら……何やってるんだ……!?」

 楓せん・・・せ?

 頭の上に「クスッ」という笑い声が聞こえた
「あれ?楓ちゃん?」
「宮田・・・お前」
「どうしたの?こんな時間に」
「どうしたって俺は仕事帰りで・・・ってそうじゃない!お前、今に何してたんだよ!?」
「何って、が具合悪そうにしてたらから家まで送ろうとしてただけだよ?」
「ふざけんなっ!!こんなにしちまいやがって・・・」
「先生?」
 ボウッと薫ちゃんの空いている手に炎が宿る
、疲れてるようだから、早く休ませてあげたいんだけど。そこ・・・どいてくれない?」
「かおる・・・ちゃ・・・」
 だめ・・・先生に手を出しちゃだめだよ。なんとかしなくちゃいけないのに、体が動かない。
 どうすれば・・・

1. 早く帰りたいと薫に言う
2. 具合が悪いので楓に送ってもらう

―――えっとどうすればよござんしょうか。とりあえずセーブして。薫ちゃんに進むなら絶対1だよね。でも楓もねぇ。。。あの俺様てきな人にアタックもしてみたい!絶対ツンデレでしょ〜〜!!
うむむ。でも続きが気になるし、1でやってみるか


「薫ちゃん」

何?と頬に手を触れてくる。それはとても冷たく、そして少しだけ震えていた。
恐いの・・・?薫ちゃん。

「大丈夫だよ。」
 私はこの、恐ろしく、また少し小さな子供のような男の子に微笑みかけてから先生の方を見る。
「センセ、私なら大丈夫です。」
「大丈夫じゃないだろ!お前」
「ごめんなさい。先生、今私たちがしてること、先生なら分かってるよね。」
「・・・」
 先生は沈黙したまま、私を見ている。ふふっ、おかし。先生が真剣な顔してるわ。

ちゃん?」
 何言ってるの?と笑いながらも、頬に置いた薫ちゃんの手には力がこもる。目が・・・真っ赤に燃えているようだ。
 紅く・・・とてもきれいな色。
 私は急にこの男の子が愛おしくなってきた。
 もちろん、出会ってすぐに心に残った。笑うとかわいいし、でもたまにちょっと寂しそうな眼をする。
 なにか・・・心に何か大きなものを抱えているみたい。
 何を恐れているの?
 何か悲しいことがあるの?
 私じゃ力になれないの?

「大丈夫だよ、薫ちゃん。」
 もう、あまり力が残ってない。私は一つ息を吐き正気を保とうとする
「先生?」

「ごめんね。自分がしてること、私分かってるから。」
「何言ってんだよ!?それじゃぁお前が死んじまうだろーが!!こうなったら力ずくでも・・」
 先生の目が変わる

―――どっどどど修羅場だなぁ。これ最初コメディーっぽい話だったはずなのに

「大丈夫」
!」
「私はそれでもいい。この子には悪いようには絶対にさせないから。きっとこの子は目的が果たせられれば、それで満足すると思う。周りの人に危害を加えるようなことは私がさせない。もし私が力を与えて、たとえそれで私が死んでしまったとしても、後悔しない。幸せよ?だから邪魔しないで。」
・・ちゃん・・・」

「ほらほら、もう今日は遅いし、薫ちゃん?」
「え?」
 不意を突かれたような顔しちゃって。

「私を家まで送ってくれるかな?ちょっと疲れちゃった。そろそろ親も心配するだろうしね。」
「・・・うん・・・。」

 薫ちゃんはチラッと先生と私の顔を見比べる。その顔は本当にしょげた小さい男の子のようで。
 そうよね、まだ15歳だもんね。
 大人っぽくしようとしてても、力が強くても、やっぱりまだ子供だもんね。
 でもその子供の15年間を、色々な思いで過ごしてきたんだもんね。

 私もそう。
 私もまだ子供だもの。
 今の私には、まだこの子の、この小さい男の子の全てを理解してあげられるような力なんて備わっていないんだ。
 一生分かってあげられないままかもしれない。
 この答が間違っているのかもしれない。
 でも

 でも後悔なんてしない。
 出会ったばかりだけど。
 まだこの人の本当に恐れているものが何なのかは分からないけれど。
 力を出し終わったその時に笑っていられるように。

「じゃぁ、先生。また明日」
「さよなら、先生」

「・・・・・・。」

 そうして私たちは闇の中に消えていく。
 大丈夫。
 きっと――――


―――きっと私たちは―――



Is that all?





チャララ〜

「・・・え?終わっちゃたんですけど?」
 何これ、なんでコレで終わるのよ?
 
・・・えぇ〜〜〜!!??

 なんで!?確実に薫ちゃんルートだったよね?でもこれ絶対トゥルーエンドじゃないよね!?いや、話的にはそのまま行ったけどさ。薫ちゃんが何にコンプレックスを持ってたのか分かったけれどもさ!

 足りない!こんなんじゃ足りないよ!最後まで、ハッピーエンドで終わってくんなきゃ!
 もっと・・・!作家さん、私に、ヲトメに安らぎをもっとくれ!!
 ちくしょー!さっきのとこやっぱり楓ちゃんの方いかなくちゃいけないの?
 うーん、このゲームわかんないな〜〜(汗)


1. 早く帰りたいと薫に言う
2. 具合が悪いので楓に送ってもらう

「せん・・・せい」
!お前・・・」
 躊躇ってる場合じゃない。
 今、この状況をなんとかしなくちゃいけない。
 先生はきっと、今薫ちゃんがしたこと・・・いいえ、私たちがしたことに気付いている。このままこの場面が続けば、きっと薫ちゃんにも、先生にとっても危険が伴うはず。
 今はダメ・・・!

 グイッと私は薫ちゃんの手から離れ、自分の力で立つ。
「先生、ごめん。ちょっと力使いすぎちゃった。少し疲れたから、回復してもらってもいいかな?」
「それは・・・構わねぇが。宮田!!」
「なに?」
「なにじゃねぇだろ!!あんなにしちまいやがって!どういうつもりだ!!」
「べつに・・・ちょっと力もらっただけだよ?命にかかわるところまではいってないよ。それに、俺は了承を得ているしね。ねぇ、?」
「薫ちゃん・・・。」
「ふふっ、そんな顔しないでよ。俺はを傷つけたりしないよ?本当に君を愛しているんだ。色んなものから君を守ってあげるよ。君と俺の力で・・・ね・・」
 くすくすっと笑いながらキスをされる。
 この人は・・・

「でも、まぁ今日はこれくらいにしてあげるよ。少し無理をさせちゃったからね。楓ちゃん?」
「・・・・」
「しかたない。今日のところは俺が引くよ。は俺のだから、手を出さないでね?」
「っ・・てめぇ」
「先生!」
「!」
「薫ちゃん・・・」
「ん?」
 この人は・・・いいえ。この子はなんて可哀想な子なんだろうか。
 笑っているように見えるけど、目が・・・泣いている。この子を孤独にさせてはいけない。そう・・私の心が言っている。
「また・・・明日ね。」
 また明日、ちゃんと話をしよう

「・・・」
 お願い。

 一人になんかならないで
「また明日、学校で」

「・・・・・・・あぁ」

 そう言うと、炎がボウッと燃え、気がつくと薫ちゃんが消えていた。

「かお・・・るちゃ・・・」

 ドサッ
「おい!!?もも・・」






 目を開けると、知らない天井が広がっていた。
 起きて周りを見てみると、また知らない部屋だった。
 きちんと整理されていて、観葉植物が窓辺に飾ってある。
 落ち着く・・・。たぶん、きっと楓先生の部屋だ。
 そう、私はあのあと気を失って・・・
「マジで重かった!!」
 ん?
「ったく、本より重いもの持ったことないんだぞ、俺は!なのにこんな重たいもん持たせやがって。しかも試験勉強かなんだか知んねーけど、鞄まで重いじゃねぇか!ふざけんなよ!どうせならボン・キュ・ボンの美女を担がせろよ。Aカップなんて死んでしまえ!」
 その瞬間
 ドシュっと私の拳が先生の水月に丁度良くおさまった。息を吸った時だったのだろう。大の大人が一人床で悶絶してる(失笑)
「サイテー!!エロ親父!こっちの方が可愛いって言ってくれる人、きっといるもん!!」
「う゛う゛・・・そんな男はファンタジーだ。つか変態だ。悔しかったらこの俺を納得させるグラマラスになってみやがれ・・・!」
「まっ、まだ成長期なんです!!もちょっとしたら私だって先生なんか目じゃないんだから!!」
「そーりゃぁ、楽しみだなぁ。」
 先生がジーっと私を見てくる。
「な・・なんですか?」
「べつに?」
 ちょっと復活した先生がクツクツと笑う。やばい・・・この人危険だわ・・・


「ふぅ・・・ったく、その調子じゃもう平気だな。」
「あっ。」
 そうか、回復してくれたんだ。特に気だるいところもない。っていうか、逆に元気になってるかも。お礼、言った方がいいよね。でも・・・ちょっと悔しい。


1、 セクシーポーズをしておちゃらけて「ありがとう」
2、 照れたしぐさで「ありがと」

―――なんだこのギャルゲーは(怒)
 乙女として落とすってことじゃなくて、完全に男に媚びるような選択肢だろうこれは!!!良いの!?これで世の中の乙女はドキドキしちゃったりするの!?まぁ『恋愛』の中にはこんな駆け引きが必要なんだけども。でもこの娘やっぱり天然じゃないわ。もちろん素でポヤ〜っとした、場の空気読めないような天然サンじゃないことは最初っから分かってたし、そこが共感しやすい娘だったし。
 でもこんな駆け引き出来ちゃうほど腹の中どす黒いなんて(失礼)
 やっぱり最近の娘は色んなこと考えてるのねぇ。



「・・・・」
「あ?なんか言ったか?」
「・・・ありがと・・ございます。」
 ちょっと恥ずかしかったので、小さい声になってしまった!(汗)ちゃんと言わなきゃって思ったのに!!
「はいはい。」
 先生はやっぱりクツクツと笑う。・・・なんかちょっと、負けた気分だわ。



 ほれっとカップを渡される。
「あ・・・ふふっ」
「なんだよ?」
 ホットチョコにマシュマロが浮かんでる。こんなの普通男の人の家にないよね。甘いの好きなんだ。
「かわい」
「うるせ」
 一口飲んで美味しいというと、照れてた先生はちょっとだけ笑って、そうかと言った。
 この人は、やさしい人だ。

―――ねぇ、本当に良いの?本当にこれで薫ちゃん落とせるの?良い雰囲気なのは喜ばしいことなんだけど、ちょっと不安なのですが。


「先生、私」
「お前、あんなことになってたのはいつからだ?」
「いきなり確信に迫ってくるのね。」
 楓先生の眼は、まっすぐに私へ向かっている。

 ふうっと息をついてみる。
 うん。大丈夫。
 私は落ち着いている。

「今日が・・さっきが初めて。それまではなんともなかったんです。今日だって杉原先輩とか優子・・・三村さん達と一緒に勉強して、皆と別れてからあんなことになったの。はっきり言ってビックリした。
でも、力を取られたのは初めてだったけど、その前から・・・寂しそうな眼をする子だなって思うことはあった。いつも明るいから余計に感じちゃうのかな?なにか、自分の中で大きなものを抱えてる子だと思います。」
「でも、それでも力を与えて良いことにはならないぞ?」
「・・・うん・・・」
「宮田は、お前が・・・が力を奪うことは納得してるって言っていたが、どうなんだ?」
「・・・納得はしてる」
「おい!?」
「分かってる・・・分かってますよ。それがいけないことだって。危険なことだってことくらい私にも分かる。力を取られた分、精力を付ければいいなんて簡単なものじゃないと思う。たぶん・・・寿命だって無理をした分減るだろうし、気持ち的にも崩れてっちゃうかもしれない。私だけじゃない。薫ちゃんだってそう。なんで力がほしいのか、力をどんな風に使うのか。それは今の私にはわからない。だけど、目的を果たしたら?全てが終わったら彼はどうなるのかしら。その次は何を糧にして生きるのかしら?そして、私が・・・」

 これは避けたいことだけれど

「私がこの世からいなくなってしまったら?」

「薫ちゃんは私のことを『心の拠り所』だって言ってたの。それは多分、信じられると思う。普段はおちゃらけてるけど、今日は違ったもの。あの子は私に力の源としての役割以上のことを求めていると思う。精神的な何かを。でも、もしその私と目的を一度に失ってしまったら?彼の心はどうなるの?下手をしたら死んでしまうかもしれないわ。」
「そこまで分かってんなら」
「うん・・・とても危険なことっていうのは分かるよ。でも大丈夫。なんとかなる。っていうか、なんとかする」
「お・・まえ、なんとかするって」
「なんとかする。今はまだ何も浮かばないけど。きっとなんとかなると思う」
「・・・っ!!」

 
ドサッ

 気づくと目の前にまた天井と・・今度は先生の顔があった。

 私・・・押し倒されてるの?

―――キターーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 
キタよ楓ちゃん!エロ教師だと思ってたら、本当に押し倒されちゃったよ!!まぁ倒れたとはいえ、婦女子が簡単に男の人の家入ってくつろぐなんてありえないし!!ってゆうかでも、さすが教師陣!野中先生は押し倒したし、楓ちゃんには押し倒されるし!やっぱり大人相手だとちょっと違うわぁ?

「ちょっ・・ちょっと先生!?どーゆうつもりですか!?」
 私の手首は両方とも先生の手で押さえられ、足は先生の足で動けない。グッと腕に力を入れてもビクともしない。
だめだ。
 男の人に筋力で勝つことなんてできるわけがない。先生、なんでこんなことするの!?
「先生!?痛っ!」
「うるせぇ・・・」
「え?」
「うるせぇ!!ふざけんなよ!!」
 先生の片方の腕が、私の両手を戒め、もう片方の手は私の首を掴む。
「先生・・・苦しい」
 息ができないわけじゃないけど、圧迫感を感じる。不快じゃないわけがない。
 じわりと、背中に汗をかく。
「ふざけんなよ。なんとかなるだ?何がどうなるんだよ!俺に押し倒されても身動き一つできないくせに!お前が思うほど、簡単なことじゃないんだよ!!」
「・・・」
「あいつも言ってた!大丈夫だって!!なんとかなるって!!
そりゃ俺だって少しくらいならって思ったさ。初めのうちはな。でも甘かった。日に日にあいつは衰弱してって、起きてられる時間だって少なくなっていった!止めても・・・それでもあいつは笑ってた!『なんてことない』って・・・。『自分なら大丈夫だから』って。
嫌なんだよ!もうあいつみたいな奴見たくないんだよ!!」

「先生・・・」
 先生・・・泣いてる?

1、 「ごめんなさい」
2、 「ありがとう」

―――あらあらあらあら。まあまあまあまあ。
 誰かと主人公を重ねているんだね、楓ちゃん!!良いんだよ!そうやって主人公を捕まえてて!ってゆうか
 
私を捕まえてて!!

 おっといけねぇ妄想しすぎた。こんな大人の男に迫られるなんてなかなかないもんね!しかも男の部屋よ!!二人っきりよ!!そりゃぁここで夢の世界へ旅立たなくちゃ、ヲトメとして失格よ。
でもさぁ、こんな格好良い人にマシュマロ入りのココアなんか出されたらキュンッとくるよね(ちなみに私は自分の家でココアにマシュマロなんか入れたことないです)。普通の人だったらちょっと引くかもしれないけど、楓ちゃん美形でしょ?しかも普段めんどくさがりっぽいのに、こんなところで乙女が出るなんて!!
 全国の男性諸君!!
 見習いたまへよ!!
 普通に格好つけててもつまらないんだよ!格好良い人は格好良いで終わる。そこからが勝負なの!なんかスパイスがなくちゃぁ。どこか欠点があったり、女の子っぽいところがあった方が、女の子は萌えるのですよ!恥ずかしいくらい転んでも、自分より甘いものが好きでも、ヘヘッと笑ってくれたらドキドキしてしまうのさぁ。
 肉食女子の時代ですからね!とことん釣ってやるが良いさ!!
 ・・・・・・・・あれ?おかしいな。私乙女だったよね?

 さて、そろそろ選択するか。
 読んで下さってる方々も、進まなくて焦れてるかもね。まぁ一つのプレイってことでね。楽しんで頂けたら本望です。

 選ぶならごめんなさいかなぁ。心配させちゃったんだよね。あのちょっとめんどくさがりな先生を。他人なんて興味無しって感じの先生を。
 でもちょっと嬉しくもあるよね。私の勝手なイメージだけど、楓ちゃんって生徒から好かれるけど、最終的には巻き込まれちゃうタイプだけど、あまり自分から深入りしようとはしなさそうだなって感じがする。
 なんつか、自分からある程度壁を作ろうとしてるような。その先生が本気で私を・・・違った。私じゃない。
主人公のことを気遣ってくれてる。
 ここはお礼を言っておくか。



「ありがとう」
「は?」
「ありがとね、先生」
「何でだよ。」
「嬉しかったから」
「お前、なんでこの状況でそんなこと言えるんだよ!!お前は今、俺に押し倒されてるんだぞ!?このまま俺にヤられちまうかもしれねぇんだぞ!?」
「ふふっ、大丈夫。先生はそんなことしないよ」
「わかんねぇだろ!?」
「そんなことしない」
 私は先生の目をまっすぐ見る。私と先生の顔の間はもう、ほんの数センチしかなく、先生の息がかかるくらいだ。
「そんなこと、楓先生はしない。私が恐がるようにわざとそんなこと言って。必死で逃げ道を作ろうとしてくれてる。本気で手を出そうとしてるなら、そんなこと言わないよ。」
「うるせえ」
 先生の手の力が緩む。
 怒ってるっていうか、呆れてるかな?いうこと全く聞かないし。
「ごめんね。先生はその人と私を重ねてしまってるんだね。」
 ごめんね。駄目な生徒で。
「分かってるよ。その人みたいに、私に自分を失ってほしくないんだよね。」
「分かってんなら!!・・」
 先生の目は必死に私を見つめている。押し倒す手の力が・・・また増した。

 初めて知った。
 大人の男の人って、こうやって泣くんだ・・・。
「分かってる。でも、私はその人がそれで幸せだったってことも分かる。そして・・・」
「なんだよ」
 先生は、まっすぐ自分を見つめる私の目に、少したじろいだ。

「そしてその人が幸せなのを、先生が知ってたのも分かる」
「!?」
「その人はきっと、後悔なんてしてなかったよね?自分で選んだ道なんだもの。誰のせいにもしないし、それが正しいと思ってたんじゃないかな。」
「・・・」
「私は後悔なんてしないし、薫ちゃんのせいなんかにもしない。それに、私はその人じゃないよ。
 私は 。私は私の道を突き進む!!」
「ぶっっ!!あっははははは!!!」
 今まで真剣だった先生が、急に爆笑しだした。
「なっ、なによぅ・・」
「くっ、あっはは!!『突き進む!!』って・・・なんだよ!?昔の歌じゃあるまいに。シリアス台無しじゃねぇかよ!!」
はははははっ!!!って先生は一人で爆笑し続けてる。
「確かに変だったかもしれないけどさぁ。そこまで笑わなくったっていいじゃんよ。一応、真剣だったんですけど」
「わっわり!でも・・ふふっ、あはは!!」
「むぅ〜〜」

 一通り爆笑し終わった後、先生はふと、やさしい顔を私に向けた。
「仕方ねぇな。そこまで覚悟決めてんなら、協力してやるよ。」
「えっ?」
「え、じゃねえよ。俺がお前だけに背負わせるとでも思ってんのか?一人の生徒に・・・女に任せっきりにはさせらんねぇだろ?あいつは、宮田は多分、お前がダメなら、他のを探すだろう。お前よりも力を持つ人間を。でも確実にその時あいつは力を取りつくすよ。お前という精神的な支えなんて無くしてしまってるからな。」
「・・・」
「でも、お前は止めるんだろ?これ以上犠牲者を増やさないために。宮田に悲しみを生ませないために」
「・・・うん!!絶対に止める!絶対に最後はみんなで笑うの!!」
 決めたんだもの。
「よし、じゃぁ決まりだ。何かあったらすぐに俺に言えよ。俺は俺で、何か役に立ちそうな情報を調べておくから。」
「ありがとう・・・楓先生。嬉しい!」
「・・・」

 ん?あれ?私なんか可笑しなこと言ったかな?

「あの・・・センセ?」
 なんかさっきまでと様子が違いますが?

「クスッ、お前なぁ・・・分かってんだろうな?今の状況が。」
「えっ?・・・あっ!!!」
 
そーーだっーーたーーー!!!!!



 私今先生に押し倒されてるんだった!!しかもここ学校じゃないし!この部屋高そうだし、防音とか完備してそうだし!やばい!やばいやばいやばいやばい!!
「ちょうど今日は隣も下も出かけるって言ってたしなぁ。」
 するっと先生の空いている手が私の服の中に入ってくる。
「なっなんでそんなこと知ってんですかっ!?」
「俺、近所付き合いは良い方なんだよ」
 なぜか私の脇腹あたりをさすってくる。くっ、くすぐったい!!
「お前を・・・を俺のもんにしちまえば、宮田もあきらめるかもしれんなぁ・・・」
「ピッ、PTAが黙っちゃいませんよ!!」
「俺がそんなこと気にすると思うか?そもそも俺保険医だし。手に職は付いてんだよ。しかも俺の親、会社経営してるから仕事の口なんて幾らでも見つかるわけ。」
「クッ、ボンボンめ!」
「なんだと?上手くいけば社長夫人だぜ?」
 ふっと、首筋に息を吹きかけられる。まずいまずいまずい!!
「先生さっき、Aカップ死ねとか言ってたじゃないですか!!」
「これはこれで楽しめそうだなぁ。あっ、俺、のいう変態だったのか。」
「私が変態って言ったんじゃないし!!」
「まぁいいじゃねぇか。」
 クスクスと笑いながら、手が肋骨辺りに来た。
 ヤバイよ!
たーーーすーーーけーーーてーーー!

 ・・・・・・いっ、痛!いきなり、チュッと音がして、鎖骨辺りに痛みが走った。
「先生・・・何?」
「まぁ、今日はこのくらいで勘弁しといてやるさ。ガキにはこんくらいで調度いいだろ。」
「はぁ?」
 先生が、すっと私の上から離れる。ほっとはしたけど、なんで急に?

「お前があんまりに焦るから、ついからかってみたくなってな。」
「はぁ゛??」
 なに・・・それ・・・?ムカつく!!
「ちょっとなんですか!?子供で遊んだってことですか??」
「うん☆」
「『うん☆』じゃないですよ!!もうっ!!どれだけビックリしたのか・・・!」
「悪かったって。あんまりお前が可愛いこと言うからな。ついな。」
「『つい』じゃないですよ!ホントに、もう!!」

 もう!本当に恐かったんだから!!
「はいはい、ごめんって。ほら、準備しろ。家まで送ってやるから。」
「先生!」
「ほら、コンビニでアイスおごってやるから。」
「食べ物になんか、釣られないんだからね!!」
「おっ、じゃあいらねぇか?」
「むっ・・・いる。。。」
「あっはっは!!」

 悔しい悔しい!!もう、先生には敵わない。さっきまでのがウソみたいに、今はケラケラ笑ってる。
 本当に楽しそうで・・・ふぅ。なんだか、もういいや。馬鹿らしくなってきた。
「ほら、手ぇかせ。まだ完全に元に戻ったわけじゃないんだ。俺に捕まってろ。」
「もう。先生の・・・バカ。」
「あっははは!」
 ささやかな抵抗さえ吹き飛ばされる。本当に馬鹿らしいわ。私まで可笑しくなってきた。
「ふふっ」
「おっ、やっと笑ってくれたな、ちゃん」
「ほら、早く行きますよ!一番高いの買ってもらわなくちゃ!ついでにジュースとおにぎりと、お菓子もね!」
「お前、また太る気か?」
「うるさい!」


 そうして私たちは部屋を出ていった。
 何が正しいのか、まだ、全くと言っていいほどわからない。

 
何が正しいのだろうか?
 何か正しいのだろうか?


 それでも私は、皆が笑っている世界を見たい。嫌なことがあっても、最後には、せめて私の眼に映る人たちには笑っててほしい。
 手探りだけど。回り道かもしれないけど。

 私は後ろを振り向かない。


 絶対に。






 余談

 次の日、私は登校してすぐ、先生のもとへ向かった。
 原因?
 決まってるわ!!あの痛みについてよ!!
※優子に知らされました。



―――ごちそうさまです。


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