についての調査書(1/3)』

 、21歳。
 19XX年、●月▲日生まれ。
 血液型――不明。
 趣味――読書。
 特技――語学。
  
・ 都内名門外語大に通う大学三年生。
・ 性格は素直で真面目。時々感情を爆発させる。泣くことが多いような気がする。
・ 小学生時代をロンドンで過ごす。中学で帰国。
・ 13歳より兄と二人暮し。

――他との関係

・ 椎名を兄のように慕っている。椎名と兄は瓜二つ? とても興味深い事実。
・ 三上は兄の友人。親友だったと言うが、本当かどうかは分からない(三上の言葉は信憑性に欠けるため)
・ 郭は必要以上にを気に掛けているように見受けられる。笠井とを挟んで、睨み合っていることが多い気がする。理由は謎。
・ 若菜・藤代とは友人関係。奴らはよくに抱きついている。(これを目撃すると、とてつもなく奴らを殴りたくなるのだが、何故だ?)
・ 真田はの前に出ると、顔がりんごのように赤くになる。病気?
・ 笠井の笑顔は、の前と俺たちの前とで変化する。理由は現在考察中。
・ 水野は最近、胃をよく押さえている。ストレス?
・ 渋沢は相変わらず、何も考えていないようだ。
・ その他のメンバーは、これから追記予定・・・。





 
The lady observation record.





 俺は不破大地。
 最近俺は、について調べている。
 の兄は、俺たちの体を治す鍵を握っている。
 何故、の兄なのか。これは偶然なのか、運命なのか。
 俺は、という女について知ることが、その謎を解くことに繋がると考えた。
 これはそのメモの切れ端だ。



についての調査書(2/3)』

 家族構成――父親・母親・兄

・ 両親は共に研究者(ロンドン発行の専門誌に記載あり)
・ 両親は医療薬学・生物学のエキスパートとして名高い(表彰式開催)
・ 現在は海外の大手医療薬品会社の研究チームに所属?(詳細不明)
は13歳より、都内の高級マンションに兄<翔>と二人暮し。(つまり、ロンドンから帰国してからずっと、兄と二人暮しをしているわけだ……)

――兄、翔について。

・ 現在消息不明。何者かに拉致されている可能性が高い。
・ 三上とは友人関係にあった。
・ 19XX年生まれ。25歳。
・ 薬科大研究室に所属する学生。専攻は医療薬学。
・ 身長・体重・その他身体的特徴は全て椎名に酷似(推定)声色も椎名。
・ 血液型不明(資料ナシ)
・ 博識(吸血鬼に関する資料、知識量は我々を上回るらしい。またローズドロップを所持していたことも、これを裏付ける要素となりうる)



 情報はどれも裏の情報屋を通じて手に入れた、かなり信憑性の高いものだ。
 情報屋によると、の両親はその筋ではちょっとした有名人だそうだ。特に医療薬学、生物学においては、各賞を総嘗めした経験もあったという。彼らが開発した薬の効果は、世界中の医療機関で発揮され続けているらしい。

 メモを閉じ、開店準備に明け暮れるを見る。
 苦労してきたに違いないのだが、そんな素振りを全く見せない
 兄……翔の力なのか? 兄が妹を守り続けた結果なのだろうか。


「おい、
「ん? 何、大地」
「兄のことが好きか?」
「え?」
 首を傾けるに、俺はもう一度繰り返す。
翔のことが好きか? と聞いている」
「そりゃあもちろん! 大好きに決まってるでしょ?」
 間髪入れずに答えたには、満面の笑顔が浮かんでいる。
「そうか……」

 吸血鬼について誰よりも詳しく、誰よりも謎の答えに近い男、翔。両親の代わりを見事果たし、の心の隙間を埋めた人物。
 そして……その人物の庇護を受け、育った女、。謎と謎を繋ぐ架け橋となり、そのきっかけを作り、俺たちと契約を結んだ人物。

 探求心が湧き上がる。
 ここ数百年、感じたことのないほどの気持ちが溢れ出す。
 人間に戻るまでの間……この二人のことを考察するのも悪くないだろう。
 お……何故か今、口から「ふっ」という息が零れたぞ?

「あ! 大地、今微笑んだ!?」
「微笑む……?」
「うんうん! 大地が笑ったとこなんて見たの、初めてかも〜!! すっごいレアー!」

 が興奮気味に騒ぎ立てているが、俺にはよく理解できなかった。
 ただ、この「ふっ」と息が零れるような状態のことを、微笑むと言うらしい。
 それは良いことなのか、悪いことなのか。

「もちっ、良いことでしょ!! 大地、今の微笑み使えば、一気にトップ5入り出来るって!!」
「そうなのか?」
「うん! 今夜から早速実践してみなよ」
「……」

 微笑というのは、そんなにも効果があるものだろうか。
 しかし、そのようなものが、の兄のことを考えた時に出たということは……俺はこの二人に感謝しなくてはならないのかもしれない。

「礼を言う、。そして翔」
「へ?」

 こうして俺は、『微笑み』というスキルを身に付けた。人間とは、思わぬところで思わぬ技術を手に入れるものだ。
 これからも、のことを考察していけば、また新たな技術が身に付くかもしれないな。ふむ……

「知りたいことは、尽きないものだな……」
「……?」

 今夜早速、この『微笑み』という技を使ってみることにしよう。



――――数日後。

「きゃぁぁv 大地が微笑んでる〜! いつものポーカーフェイスもいいけど、この微笑も素敵〜vv」
『ふっ!』
「で、でも大地? そんな力強く微笑まなくてもいいんじゃ……?」
『? そうなのか? 微笑みとは息を吐くものだと認識しているのだが……』

 何かを勘違いしている不破であったが、の予想通りこの月の中締め日では、見事トップ5入りを果たしたのであった。





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本編に進むかと思いきや、ちょっとリターンして、不破っちでお送りしましたvぶっちゃけ、夢でも何でもないですが、本編前に一度、ヒロインの生態(?)……もとい、ちょっとした裏事情について触れておきたいと思いまして。これを読めば、何となくですが、この先の展開が読めていくのではないでしょうか? 両親との関係とかね。
ではでは、次こそは本編に進みマース⊂(^(工)^)⊃