〜受験生に贈る、合格祈願ss〜

 



、こっちこっち」
「ちょっ、待ってよ〜! うわわっ」

 此処は某神社。学業の神様が奉られてて、御利益があるって有名。受験生の私は、今が追い込み時期。もうここまで来たら神頼みしかないわけで…今まさに、神を前に祈祷(?)しようってところ。しかしこの人だかりは凄まじい。あ〜、こんなに沢山の受験生の面倒なんて、絶対見てくれないよね……(汗)

「ほら、次だよ。ぼっとすんな」
 そんな私を呆れ顔で見ているのは、一つ上の幼なじみ翼。
「う、うん」
 私は翼と同じ学校に行きたくて、必死に勉強してきたんだよ。翼には言ってないけど…。

 賽銭を投げ入れ、鈴を鳴らす。
 近所のお姉さんが言ってたんだけど、鈴を鳴らすのは神様にここに来たことを知らせるためなんだって。
 目を閉じ、神に祈る。

 どうかどうか、春から翼と一緒に登校できますように…!
 あわよくばまた、サッカー部マネとして翼の側にいられますように…!!
 そしてそしてっ、もし許されるのなら、私を翼の彼女に……!!!

……!」
「え…」
「長すぎ。後ろが詰まってるよ」
「うわわ!ごめんなさいっ」
 慌てて列から離れると、翼が苦笑する。
「いるんだよね、神頼みだけはしっかりちゃっかりする奴」
「う…だって…」
 自分じゃどうにも出来ないことだってあるじゃん。
 そう言おうとした時、ふいに翼が呟いた。
「自分の力だけじゃ心許ないこと…あるよね…」
「翼……?」
 翼らしくない呟きに、私は思わず翼の額に手をあてた。
「なっ…何すんだよ」
「う〜ん…熱はないみたいだね」
「お前な…」
 翼は何故か顔を赤くしながら、そっぽを向いた。
 翼は時々こういうふうになる。何でだろう??
 いつものことだと気にせず、私は翼に笑いかけた。
「ねえ翼、翼は何をお願いしたの?」
「出来の悪い幼なじみの合格祈願」
 はにかんだように笑った翼。
「っ/////」
 翼の笑顔が美しすぎて、思わず目眩がぁ……(汗)

「プラス…
そいつとの恋愛成就
「え? 何か言った?」

 参拝客のざわめきで翼の声が掻き消される。
 私が聞き返しても、翼は悪戯っぽく微笑むだけ。
 は〜あ、何かスゴイ重要なこと、聞き逃したような気がする…。

 まあでも、今はこれでいっか。
 まずは一歩前進するためにも、とりあえず目下の目標は『無事合格!』だもんね。

「翼、私頑張るからね!」
 恋も勉強も、どっちも勝ち取ってみせるんだから☆
 努力はきっと報われるって、ぜーったいに私が証明してやるんだから!!
「フフッ……期待してるよ」
 そう言った翼は、とっても嬉しそうだった。







――――そして春。
 私は……

「翼ー! 制服どうかな?? 似合ってる!?」
「へえ……馬子にも衣装ってやつ?」
「ひっどーい!!」
「フフッ、冗談だよ。可愛いよ」
「〜〜〜っ/////」
「あははっ、、顔真っ赤」

 桜が舞い散る通学路で、翼の隣を歩いている。
 ずっとこの風景を夢見て頑張ってきたけど……いざその時になってみたら、何ていうか……感無量って感じ。
 昨日なんて、夜興奮し過ぎて眠れなかったくらい。

 翼、私、ちょっとだけまた、翼に近付いたよね?

「……やっとだ」
「え?」
「お前と一緒に登校するの、結構楽しみにしてたんだよ」
「……」
 そしてまた、そっぽを向く翼。

 ああ…何となく分かったかも。
 翼は……

「照れてるの? もしかして」
「はっ?! 何言ってるわけ? 、馬鹿じゃないの!?」

 そうムキになるところが可愛いなんて言ったら、翼はどんな顔する?
 時々子供っぽくなる翼が、私は大好き。
 笑いを堪えながら、私は翼を覗き込んだ。

「またよろしくね、翼先輩☆」
「……ったく」


 ねえ神様。
 私のお願い、聞いてくれてありがとう。
 あとはきっと、自分の力で……この先の幸せ、掴んでみせるからね!

(来年もその次の年も、翼の隣を歩けますように!)

 キラキラ光る並木道。
 隣を歩く幼なじみを眺めながら、私は未来に思いを馳せる。



fin...


 今年の受験シーズンに、結波ちゃんに送りつけたssを、ちょこっとだけ手直しして再アップしてみました。受験って、本当に大変ですよね……。遠い昔が甦りますです(汗)でも、頑張った先にあるのは、どんな結果にしても『幸せ』だと思いますよ。結果だけが全てじゃない……そんな言葉が、身に沁みます。受験は人生の中での一個の関門かもしれませんが、長い人生の中の一瞬に過ぎません。ナーバスになったりするかもしれませんが、そんな時こそ「心に余裕を」☆世の受験生、頑張っておくれ!

20079/20 柚

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