「私、平気だもん!」
そう強がっては、陰で泣くアイツ。
そんなアイツは俺にとって……
家も隣で幼馴染のアイツ――と俺は、幼稚園からの腐れ縁。
小さい頃は、一緒に寝たり、風呂に入ったことだってある。
「かじゅまのバカ! 嫌いっ!!」
は意地っ張りで、泣き虫だった。
喧嘩をしても、絶対に自分から謝らない。
でも、陰でずっと泣いているのだ。
「うわーん……かじゅまぁ……かじゅまぁ……」
小さい身体を震わせて、俺の名前を呼ぶはまるで「ウサギ」だった。
白くてふわふわしてて、目は泣き腫らして真っ赤。
俺はこの時、幼いながらも「こいつは俺が守らなきゃ」と思った。
「ねえちゃん! 飼育小屋のウサギが……」
小学4年の時。
クラスで飼っていたウサギが死んだ。
は飼育係で、そのウサギを誰よりも可愛がっていた。
死んだウサギを前に、クラスの皆は泣いていた。
でも、は泣かなかった。
そんなに、クラスメイトは言った。
「ちゃんって、冷たいよ! どうして泣かないの?」と。
は黙ってた。
でも、俺だけは知ってた。
は「泣かない」んじゃなくて「泣けない」んだということを。
案の定、は誰もいなくなった後、飼育小屋の隅で一人泣いていた。
あの頃と同じ、小さく震えながら。
「うぅっ……ウサちゃん死んじゃやだぁ……うわーん!」
俺はそっと、の頭を撫でた。
はしばらく泣いていたけど、そのうち泣きやんだ。
そして、ぼそっと呟いた。
「……ありがと、かずま……」
「べつに……」
あれから随分と時が経って。
俺たちも、大人になりかけている。
でも、俺の隣を歩くはやっぱりあの時のまま。
「んもう一馬、聞いてる!?」
「聞いてるって……それで、はまた意地張って、強がったんだろ?」
「つ、強がってなんかないもん!」
ムキになって言い返すあたり、どうやら図星らしい。
思わず笑ってしまった。
「な、何笑ってんの?! かじゅまの癖に、生意気―っ!!」
「かじゅまって言うなよ! ったく……お前はいつまで経っても……ウサギみたいな奴だな」
俺の呟きに、は目を丸くした。
「ウサギ? 私が?」
「ああ、ウサギ。は昔から俺にとって『強がり兎』だよ」
「な、何で……」
「何でって……お前の泣いてる姿、まさにウサギだし」
「えぇっ!?」
口をパクパクさせながら、俺を見つめる。どうやら照れてるらしい。
「ま、強がりもいいけど、たまには素直にならないとブスになる――――」
「バカじゅまは黙れっ!!」
――――ごすっ
「ぐえっ」
「ふんっ! 一馬なんて、だいっ嫌い!!」
強烈な右ストレートが炸裂させ、はドスドスと足を踏み鳴らしながら行っちまった。
「いてぇ……ったく、どうせまた一人で泣く癖に……」
そして今日もまた、俺は強がり兎の頭を撫でてやるのだ。
アイツが淋しくて、死なないように。
でも俺は、そんな意地っ張りで強がりなが、可愛くて仕方がないんだ。
End.
このお題を貰った時、真っ先に一馬が思い浮かびました。一馬って、へタレキャラではあるけれど、きっと笛キャラの中ではかなり男の子っぽい部類に入るんじゃなかろうか。不器用だけど、すっごい男の子らしい男の子。一馬はそんな雰囲気を持ってると思うのです。普段へタレてる男の子に、実はいつも守られてるって気付いた時、乙女はみーんな恋に落ちるのですv
2007/9/20 柚
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