『サンタ meets Girl♪』




 12月24日。
 サンタたちが暮らすサンタの王国にて。

『とある国に住む女性が、今年のプレゼント受取人に選ばれたわ。貴方たち三人で、それぞれ彼女の望むものを渡してきなさい』

 世間一般では、サンタクロースは迷信のような扱いをされていますが、サンタの存在がこんなにも長く、広く、人々の中で生き続けている理由を、貴方は考えたことがあるでしょうか。それは、実は本物のサンタが、毎年必ず一人〜数人を選び、本当にサンタの贈り物としてクリスマスプレゼントを渡しているからなのです。この広い世界で、必ず何人かは本物のサンタから贈り物を貰っているということなのです。
 そして、今年もその習わしの通り、とある国の女性がプレゼント受取人に選ばれました。

「了解したで! ほな、行きまっか。姫さん、たつぼん」
「ちょっと待ちな。まだ、そいつのこと確認してないだろ」
「確かファイルにされて……あ、あったぞ」


*調査書*
名前:
性別:女性
好き:アクセサリー系、可愛いもの、愛(?)
特記:ごくごく普通の女性。サンタの存在は信じていないものの、心の奥底では密かに願っているようだ。


「ふーん……アクセサリーね」
「可愛いものっちゅーと、ぬいぐるみとかか?」
「愛っていうのは一体……(汗)」

 今年、彼女、嬢にプレゼントを渡すことになったのは、サンタの国切っての人気者、翼・竜也・シゲの三人。三人は、事前に行われた人気投票で見事上位入賞を果たし、このような大役をサンタの神から仰せつかったのでした。

「とりあえず、三人がそれぞれ目ぼしいものを調達してくるっていうのはどうだ? それで、夜中に落ち合わないか?」
「OK。じゃあ、また夜中にな」
「ほんなら、また後でー」

 こうして三人は、それぞれのセンスでプレゼントを調達することになりました。さて、彼らは一体、何を選んだのでしょうか。






――――真夜中。

「よし、プレゼントは揃ったね。後は着替えるだけか」
「姫さん、実はな……」
「ん?」
「さっき、監督が俺らの服を渡してきたんやけど、何や手違いで二着しか用意できんかったらしいんや。それで、残りの一着がちぃとばかしサイズが小さくて、姫さんしか着られへんと思うんやけど……それでええ?」
「……別に構わないよ。確かに、お前らよりはちょっとだけサイズ小さいことは認めざるをえないしな」
「ほんますまへんね。ハイ、これ姫さん用衣装やv」

――――そしてお着替えv

「…………おい(ぴくぴくっ)」
「ギャッハッハッハ!! ひ、姫さんっ、めっちゃ似合っとるで……!!w」
「ぶふっ!! 椎名!? ほ、本気か……」

 真っ赤な衣装に身を包んだ三人。
 しかし、約一名、サンタらしからぬ可愛らしいいで立ちの方が……。

「…………何の冗談のつもり?(ぴきっ)」
「冗談じゃないで? 監督が『翼なら似合うわv』って言って、渡してきたんやし」
 翼は、何故か『サンタ・ガール』の衣装を纏っておりました! しかも、ご丁寧にミニスカートにリボンまで付けていらっしゃいます。
「寝言は寝てから言えよ!!(怒)こんな格好で行けるわけないだろ!? 冗談じゃない!! 僕はぜーーーったいにお断りだからな!!!!!」
「でも椎名、俺たちはサンタの衣装を着ないと違反になって、もう二度とサンタになれないんだぞ。どうするんだ?」
「姫さん、一時の恥やで? しかも、よぅ似合っとるんやし、そんな気にしなくても平気やないの?」
「……お前ら他人事だと思って好き勝手言ってくれるね? じゃあお前らがこの服着ろよ! サイズが小さい? んなもん俺の知ったこっちゃないね。無理矢理着るなり、引き伸ばすなりしてみろよ! どうして俺だけがこんな屈辱的な目に遭わないといけないんだよ! ありえないだろーが! とにかく断固としてこんな服は着ないからな! これを着るくらいなら、サンタ免許剥奪された方がマシだよ!!」
「マシンガントークやね……」
「……(汗)」

 息を切らしながら怒り狂う翼の背後に、突然黒い影が現れました。

「フフフ……翼、私からのクリスマスプレゼントは気に入ってくれた?」
「っ!? 玲、お前一体どういうつもり!?」
「あら、私はその人に一番合う衣装を選んだつもりよ」
「それがコレかよ!!(激怒)」
「フフッ……ちなみに、その衣装脱ぐことは出来ないからv」
「は!?」
「それは、特殊な魔法がかかっていて、サンタの役目を終えるまでは脱げないようになってるのよv だから、貴方は今年はその格好でお仕事しないと駄目ってこと」
「なっ……!?(怒りのあまり、言葉を失っている)」
「うふふ、じゃあそろそろ時間ね。頑張ってね、三人ともv」
「……(椎名、哀れ)」
「姫さん……凶悪なハトコやねぇ(苦笑)」
「…………はぁ(怒る気力を失った翼)」


 こうして、三人のサンタはトナカイ二匹を引き連れてクリスマスの空を駆け出しました。

「ほら、早く進めよ! トナカイ!!(げしっ)」→イライラをトナカイにぶつける翼。
「痛っ! な、何で俺たちがトナカイなんだよ!?」
「えー? 別にいいじゃん! 俺は楽しいからいいけどv」
「姫さん今荒れとるから、逆らわへん方がいいでー?」
「うっ……分かったよ……」
「真田、藤代、あそこがターゲットの自宅だ」

 ひと悶着起こしながらも、何とかターゲットの家に辿り着いた三人と二匹。
 トナカイは空の上で留守番をすることになり、サンタだけが家に降り立ちました。

「さて、ちゃんはもう寝てるかいな?」
「いや……まだ起きてるね」
「うーん……でも、俺たちの正体を知ってもらったほうがいいんだよな。このまま突入するか?」
「そうだね。じゃあ、行くよ」
「らじゃーv」

 三人は、窓を軽く叩きました。
 すると、中にいた女性が驚いた目をこちらに向けました。

「え!? サンタ……!?」
「こんばんは、さん。サンタの竜也だ」
「メリークリスマスv 俺はシゲちゃんやで」
「僕は翼。、お前にプレゼントを持ってきたんだよ」
「嘘……本当に……」

 は驚きで目をぱちくりさせています。しかし、次の瞬間……


「きゃーーーーーっ!!!! 本物のサンタクロース!!!!!!!」

――――だきっvvvv


 物凄い勢いで、三人に抱きつきました。
「うわっ!?」
「わぁおv」
「おっと」
「サンタはやっぱりいたのね!? 子供の時から『もしかしたら……』ってずっと思ってたけど……夢みたい! こんな素敵なサンタさんたちに出会えたなんてっ」
 感激で目を潤ませるに、サンタトリオは胸を射貫かれました。要するに「胸きゅん」です。ずっきゅんおよよ。

「何や、アンタ。えらい可愛えなぁ」
「心が綺麗なんだな……。ターゲットに選ばれた理由、分かる気がするよ」
「フフッ、そんなに僕たちのこと待ってたんだ? プレゼントあげたくなるね……」

 そして、それぞれがおもむろにプレゼントを手に持ちました。

「ほな、最初はシゲちゃんからやv」
「わっ、ありがとう! 開けていい??」
「もちろんや」
 中を開けると、大きなクマのぬいぐるみが出てきました。胸元には大きなリボンが結んであり、大きな目が愛らしいとても可愛いぬいぐるみです。は目を輝かせました。
「可愛い……!! ありがとう、シゲ!!」
「どういたしましてv」

「じゃあ次は俺だな。はい、メリークリスマス」
「ありがとう、竜也」
 出てきたのは、クローバー型のピンキーリング。シンプルなデザインが、逆にどんな服装にも合わせられそうです。は自分の小指に付け、それを眺めて呟きました。
「綺麗……すごい素敵。竜也ってセンスいいんだね! ありがとう」
「喜んでもらえたなら良かったよ」

 そして最後は翼です。翼がプレゼントを渡そうとすると、がハッとしたように言いました。
「翼って……女の子?」
「はぁっ!?」
「超可愛い! めちゃくちゃラブリー! その衣装すっごいよく似合ってるね!! こんな可愛いサンタさんなんていたんだね。シゲも竜也も超美形だし、サンタってスゴイ!!」
 純粋な瞳で見つめられ、翼は怒るに怒れないようで……。
そんな中、笑いを堪えているのはシゲと水野。そんな二人を睨みつけつつも、を怒るわけにもいかない翼は、開き直って言いました。
「……僕は正真正銘、お・と・こ! この格好は不可抗力。でも似合ってるんなら別にいいよね? 誰にも迷惑かけてないし、見苦しい格好ってわけでもないんだろ?」

「うわ、姫さん……開き直ったな……」
 シゲが半笑いで見やると、翼は疲れた顔を浮かべています。

 その時です。が翼の前に歩み出ました。
「……?」
「……可愛い!」
「へ?」
「翼って男の子だったんだ!? こんな可愛い男の子がサンタなんて!! あーもう超可愛い! どうしよう……あーもうっ、我慢できなーいっ!!」

――――だきっvvvv


「翼っ、超可愛い!! もう離したくなーいっ!!」
 また例の如く、今度は翼に抱きついたのでした。
 は「可愛いもの」に目が無いのです。そんなことが特記してあったな……と、どこか頭の遠くで三人は思い浮かべました。しかし、すぐさまハッと我に帰ったのは、シゲと竜也。
「……なっ! 、翼にだけ抱きつくのはズルイんちゃう!? シゲちゃんには抱きついてくれへんの!?」
「椎名、離れろ!」

 しかし……翼はこの二人に恨みがあります。サンタガールの(笑)
 自分たちを見てやきもきする二人をちらっと見た翼は、にやりと笑うと、そのままを抱きしめ返しました。
「わわっ!」
「そんな可愛いことすると、ホントにお前をさらっていくよ?」
「なっ……!! 姫さんっ、抜け駆け禁止やで!!」
「椎名、お前っ……」

 恨めしそうな二人を無視した翼。
 の瞳を覗き込みながら、極上の笑みを浮かべて言いました。

「僕からのプレゼントは『愛』だよ、……」
「えっ……/////」
「フフッ……この出会いが、僕にとってのクリスマスプレゼントだね」

「ちょっ、姫さん!? 俺らの存在忘れないでくれへん!? っ、サンタは三人いるんやで!!」
「椎名に、まんまとやられたな……」
「そんなぁ……こんなことなら、無理してでもサンタガール着てくれば良かったわ〜」
「お前が着たら、は抱きついてこないと思う……」

「フン……僕を嵌めた報いだね」
 翼はといちゃつきながら、落ち込む二人に向かって舌を出していたとかいないとか。


 そんなこんなで、聖夜は静かに……いや、賑やかに更けていくのでした。
 メリークリスマス!!.*:・’゜☆。.:*:・’゜★゜’・:*


追記:翼は意外と根に持つタイプ。彼を怒らせるのは、ほどほどに……☆



 end



トップ3は、翼・シゲ・たつぼんの順番でした!! いやー、最初から姫はぶっちぎりだったんですが、他の二人は意外でした! 誠二と一馬が来るかなって思ってたら、まんまと二人は追い越されてしまいましたね(笑)どんまい二人。でも、このトリオを書く機会なんて滅多に無いので、個人的には面白かったです。お! 考えてみればこの三人。吸血鬼輪舞曲では、接客・管理・コックと分かれておりました。うんうん、ますます接点がないぞ(笑)でも、結構まとまりのある三人だと思ったり。
三人に共通しているのは、誰もが皆、とってもしっかりしてるってことですかね。正統派ではたつぼん。世渡り上手なシゲ。どちらも兼ね備えている翼。素敵なトリオだと思いませんか? 
今回一番の満足は、翼にサンタガールの格好をさせられたことです(爆笑)このコメントを見た時「マジいい! 最高だ!!」と狂喜し、是非使いたいなーと思っておりました。あとは「待ってた?」っていう台詞も素敵に萌えたので加えたのです。何だか姫が一番美味しいですけど、トップになったご褒美ということでv

長くなりましたが、クリスマス、皆さん楽しんでくださいね☆投票してくれた方、本当にありがとうございました!

※結果一覧、キャラからのコメントはコチラからどうぞ★★

2006年12月24日 桃井柚