「……ほんなら俺、今日はもう帰るわ」
「え? もう?」
「じゃあな」
「え、あ、……うん。お休みなさい、シゲ」

 まだ夜はこれからというところで、俺は早々にのマンションを後にした。いつもならこのまま、泊まっていくはずやのに。
 部屋を出た時に見た、の歪な笑顔が頭を掠めたが、あまり気にならへんかった。

 本当なら、と愛し合って眠りにつくはずの夜。
 そこに今、一筋の亀裂が走ったことになんて、俺は気付けへんかった。




 WARNINGちと後悔と



「もしもし、なあ、これからそっちへ行ってもええ?」
 この間街で引っ掛けた軽そうな女に電話して、俺は今夜の予定を塗り替えた。

 と付き合って早3年が過ぎた。
 優しくて可愛くて気が利く出来た女。それがやった。俺はのことが好きやったし、それなりに楽しく過ごしてきたと思う。

 でも……最近、少しこの生活に飽きてきてしもうた。なんちゅーか、と一緒におるのが当たり前になり過ぎて、どうにも刺激が足りへんようやった。『いつもの...』に飽きていたんやと思う。だから、いつも傍で笑って、安らぎと喜びを与えてくれていたが薄れて見えてしもうたんや。
 そんな俺の態度に、は少し戸惑って……でも健気に、いつもと同じ笑顔で俺に接してくれていた。
 心に……涙を隠して。






 それからしばらくの月日が流れ、俺は女遊びが日課となっていた。
 と会っては、すぐに別の女と遊ぶ日々を送っとった。
 何だったのやろうな……今思えば、こうして刺激を得ないと、と一緒にいる心地良さに気付けへんから、わざとやっていたような気もするし。それとも、ただ単に、俺が女好きやっただけっちゅーことかもしれへん。
 今となってはもう、この時の気持ちなんて覚えておらへんのやから、今更どうこう出来ないんやけどな……。

 でも……あの日、が知らない男と歩いているのを見て……躊躇いもなく、別れを切り出したことだけは、本当に愚かやったと思う。

「何や……他の男と寝たんかい?」
「シゲ…違うの…私はただ………」
「なら、もう俺らも終いやな。ほな、さいなら」
「っ……シゲ……!!」

 とどめを刺した台詞。それを受けたの顔が、今でも心に残っとる。泣きそうな……いや、本当はもう泣いとったのかもしれへん。あんなの顔を見たのは初めてやった。
 今思えば、あれはの精一杯のあてつけ。ちょっとした夜遊びやったんや。
 俺への愛を裏返した警告やったのに……俺はそんなに興醒めしてしもうて。本当はすごいショックやったのに、それを興醒めにすり替えてしもうたんや。
 そんな愚かな俺だけが先走って、「すべてはからの"別れ"だったんや」。
 そう、片付けてしもうた。

 でも……なんて勝手なんやって思うけど、俺はを忘れられへんかった。
 と別れて、離れて初めて、と一緒にいる幸せを感じられたんや。
 俺はみっともなくに連絡し続け、その度に言い訳を掻き集めてに縋った。
 でもは、もうまともに俺のことを見いへんかった。背けた横顔には、もう悲しげな表情は無い。あの時の涙と一緒に、俺のことも流して忘れてしもうたのか?

 は……海のような女やと思う。満ち引きが激しく、広くて深い存在。
 そして今の俺はまるで……砂上の楼閣。足元がおぼつかない、ダメな男や。

 は俺に、夢だけを残していった。
 迷う俺を独りにしていなくなった。

――――「なら、もう俺らも終いやな。ほな、さいなら」

 とどめを射す台詞。それを告げたのは俺。愚かな俺が、一人先走った言葉。
 そんなダメな俺は、自分を守るために、を失うこと"運命"と片付けた……。


 でも……の笑顔が忘れられへん。
 こんなになってもまだ、を愛しいと思う気持ちは消えへん。
 きっと一生、のことを忘れることなんて出来へんのやろうな……。






 あれから数年経って、あの頃を振り返ってみる。
 思えば、のあてつけには「優しさ」が感じられた。
 今になって……愛を裏返した警告だと気付けたなんて……俺はホンマのアホや。

 数年前、俺から去っていくの姿が今、目の前に映し出される。

……」
「さよなら……シゲ……」


 遠のくの後ろ姿。
 手を伸ばしても、もう届くことはない。

……俺は……本当にアホやった…………堪忍な……」

 もう何もかもが遅すぎた。
 どんなに悔やんでも、あの幸せが戻ることは無いのだと思うと、やるせない気持ちになる。

 俺は、これからもずっと、あの時の俺を恨み続けるんやろう。
 毎日、「後悔」という二文字に潰されながら、への想いを断ち切れずに生きていくんやろう。
 それが俺の、の警告に気付けなかった俺の罪なんや……。

「なあ……こんなみっともない男の顔、もう二度と見たくないやろうけど……それでも俺は、お前に会いたいんや…………」

 俺の呟きは、真っ青な……まるで海のような空に吸い込まれていった。



End...
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……最低だな、この話も。いや、ジャンヌの歌は最高なんですよ!! 本当にマジで!! でもあれはやっぱり、yasuの歌声と全体のテンポあってこそなんでしょうね……うぅ。シゲでWARNINGです。これはまんま「警告」の歌。高校生の時に聞いてハマッて、すっごい好きになりました。サビの部分が大好きなのですv
 笛で大人部門担当は、私の中で「みかみん、シゲ、英士、姫」の順かなーと勝手に思ってます。何ていうか、青春爆裂な感じの方とか、爽やかキラキラー系なキャラは似合わない。そう……少し腹黒くないと、ディープなアダルト世界には不釣合いなんですよねぇ。え、いやだからって上記4名がそんな腹黒だなんて……心の中でしか思ってないですよ!(意味無)いや、腹に一物抱えてるくらいの方が、何だか人間らしくて素敵じゃないですか?(そうか)私はそう思うよ!!(勝手に思ってろ)
 シゲは若気の至りで色々やっちゃいそうなので、あえてWARNING!としました(笑)若い時の火遊びはほどほどにしないと、大事なモノを失くしちゃうよ……! ということで。

2008/08/30 桃井柚