調査報告書 10007号
『ハンバーガーの中身〜ミミズバーガー事件の真相について〜』

調査概要:都市伝説の一つ『ハンバーガーの肉にミミズや猫が使用されている』という噂の真相を突き止める。

●噂の概要
 某有名チェーン店で使用されている牛肉と呼ばれているものは、実は食用ミミズである。それに気付いた人物が、その店の店長に問い詰めると、一万円を渡されて「このことは秘密にしてもらえないか?」と頼まれる、というもの。

●調査結果
 噂の概要からも分かるように、この都市伝説は一笑に付される典型的なものだ。この噂が話され始めたのは、某有名チェーン店が日本に入ってきた1970年代頃。最初は猫肉バージョンが主流だったらしく、いつ頃からミミズが混ざり始めたのかは不明とされている。実際に「アルバイト中に、猫の死体が厨房に沢山ぶら下がっていた」と話す人物も多かったらしく、よく親しまれた噂であったことが伺える。
 何故、このような噂が広まったのか。その理由は、三点あると考えられる。
 一点目は、ファーストフード批判。ファーストフードは別名、ジャンクフードとも称される。日本の食文化は、世界と比較してもかなり高レベルにある。繊細な味付けは、濃い味のジャンクフードとは対極にあると言える。このファーストフードを非難する声は、昔から根強く存在している。特に、老年層はこの意識が強いと思われる。この意識が、猫肉・ミミズ肉バーガーの噂を助長していったことは間違いないだろう。
 二点目に、安価に対する人々の不安が考えられる。牛肉は、日本人の感覚でいくと、そんなに安値で購入できる食材ではない。しかし、それがとてつもない安価で売られているのがハンバーガーである。人々の中に「何故、あんな安く売れるのだろう」という疑問が湧き上がり、それが「きっとあれは、牛肉ではないのだ」という噂に繋がるのではないだろうか。実際は、国産牛に対し、輸入牛は大量生産をしているためコストがかからず、結果として安く売ることが出来ている、それだけのことだ。手間がかかっていないのである。
 そして三点目。これは、猫肉バーガーについてになるが、猫と人間の関係性によるものと思われる。猫や犬は、人間ととても近しい存在である。家畜の代表格であるこれらの動物は、我々の生活に深く浸透している。人間とほぼ同等に扱われることもしばしばある。そのような存在をもし、知らず知らずのうちに食べていたら……という不安が反映されたのではなかろうか。猫は突然姿を消し、どこかへいなくなってしまうことも多い。そういったことからも、「いなくなった理由はもしかして……」と、この噂に結び付く一つの理由になっていると考えられる。
三点を総合して考えても、悪意と疑惑、それがハンバーガーを「得体の知れない食べ物」として刷り込んだことは明確であろう。

 以上のことからも、この噂はあくまでも噂に過ぎないと結論付けられる。それが、世間一般での常識であろう。
よって、ここから先は全て、調査員個人の主観であり憶測に過ぎない。ただし、今後何かが分かるかもしれないという期待を込めて、敢えて記すことにする。


 この噂は……実在するものだと考える。事実、調査員は実体験済みである。しかし、結論から言えば、この噂の真相は謎に包まれたままである。証拠物件、および証言が全く取れず、現段階ではこれ以上の調査は無理であると判断せざるを得ない。実体験済みと記したが、その記憶は曖昧で不確かである。その当時、調査員の精神状況は通常とは異なっており、口止め料として手に入れた現金も遺失している。
 調査員は○月△日現在、この噂の調査を続けている。よって、この報告書は随時新たな情報が付け加えられる可能性があることを、予めご了承いただきたい。

 以上

御影探偵事務所所員
 橘 香月

※尚、この報告書は、同事務所所長、御影 紫季の管理下において、永久に保管されるものとする。



ファイル001 終


return>>