「おかえりなさ〜い!ア・ナ・タ///」
「眉毛剃るわよ」




〜ときめいて☆魔法学園! 人気投票お礼SS〜
大きな野望 小さな約束





「酷いですよオーナー!!イキナリ女性に向かって『眉毛剃る』なんて脅し!」
「誰が『女性』ですって?アンタみたいな前か後ろかも分かんないような体の作りしたガキンチョと一緒にされたら、
世の中の女性に大ブーイングされるわよ!!(怒)つーか『///』とかキモい!!!」
「ひっど!!女の子に向かってひっど!!!ってゆうかオーナー・・・『ガキンチョ』て・・・・。」
「何よ?」
「言葉にやっぱり古いニホヒを感じますよね。何年ぶりに聞いたんだろ。」
「あ゛?」
「ナンデモアリマセンヨ」


―――ここはアタシの経営している店、『Mephisto』。繁華街よりも一本別の道にある、落ち着いたbar。
薄暗く、ゆったりとした雰囲気を慕って、大人の男女が通う場所・・・・
あと2時間ほどすれば、そんなお客様がいらっしゃる。なのに・・・
・・・なぜ・・・いる。

ガキが(怒)






「で?今日はバイトの日じゃなかったはずよね?いったい何しに来たのよ。まさかオママゴトしに私の loyal で executive な店に来たわけじゃないでしょ?つーか遊びに来たとかヌカしやがったらトメ吉呼んでつまみ出すわよ!」
「いや、トメ吉さんの方がまだあんぜ・・・」
「柚?」
「ナンデモアリマセンヨ。ってゆうか、忘れちゃったんですか?この間私に料理教えてくれるって言ったじゃないですか!」
「ああ・・そーいえば・・・あんたに色気がないなら、せめて男の胃袋を掴めって言ったような気も・・・」
「そですよ!『愛のお料理教室〜つかまえて☆おしゃまなドルフィン〜』開催してくれるって言ったじゃないですか!!こんなひとむかし前の題名付けるのオーナーくらいしかいませんよ」
「アンタ・・・(怒)」
「と、とにかく開催してくださいよ!楽しみにして、ヒラッヒラのエプロンまで買っちゃったんですから」

よく見ると肩と裾のところにフリルが少し付いた、淡いピンク色のエプロンだった。
私自身は原色が好みだけれど、この子にはこういった色の方が合うみたい。
本人も気に入っているようで、クルクルと回って見せる。

―――何アピールなんだよ

「あら?何よ、それいいじゃない。アンタに良く似合ってるわ、可愛い。」
「へ?」

ポカーンと柚が口を開けてこっちを見ている。

「?何よ、そのアホ面。この私が褒めてんじゃないの。もっと喜びなさいよ。」
「いや、そんな風に言われると思ってなくて。ど・・・どうしたんですか、オーナー。なんかオーナーに可愛いとか言われるとちょっと気持ち悪いんですけど。」
「・・言うじゃないの。」

折角褒めてあげてんのに、何その言い草。
普通の女性はアタシに褒められたら舞い上がっちゃうものだけど。どんだけの女を泣かせてきたと思ってんのよ。
・・・やっぱりまだまだガキなのね。

―――フフッ、ちょっと悪戯でもしてみましょうか。


「これなら男ウケ良いわよ。ヒラヒラのエプロンに制服なんて、そそるわ。」
「おおお、オーナー!?」
後ろに手を回し、結んであるエプロンの紐を引くと、シュルッと音がしてリボンが解けた。
「そこに美味しい料理なんて出てきたら、男なんてイチコロよ。単純なんだから。」
「オーナー!近い・・・です。しかも何でエプロン・・・」

フフフッ、焦ってる、焦ってる。かーわ・・・

「ちっ、近い!!!!!」
ドゴッッ
「・・・くっ・・・やってくれるじゃないの。なによこれ、くちから赤ワインがこんにちは しちゃってるじゃないの。」
「ごっごめんなさい!!つい。」
真っ赤になって可愛いけど、めっちゃ痛い。しかもいそいそとエプロン直し始めちゃうし。
「ついじゃないわよ、私の美しい顔に傷がついちゃったじゃないの。どうしてくれんのよ?」
「だってオーナーが、いきなり////」
「あーらぁ、柚ちゃんは人のせいにするのかしらぁ?感心しないわねぇ。思えば一番最初もそうだったわね」
「へ?」
「私のことぶっ飛ばしたじゃない!!」
「あ。」


・・・そーです。ええ。そーですとも。
はじめて高城君がオーナーと会ってる時、私はオーナーのことを悪漢だと思い、思わずぶっ飛ばしちゃいました。てへっ☆
だってあのとき超恐かったんだよ!いたいけな少年を魔界へ誘う そう・・・まるで毛倡妓のように・・・(汗)


「柚?なんか聞こえたような気がするんだけど(怒)」
「ナンデモアリマセンヨ、オーナー。ワタクシガ アナタサマニ言エル事ナンテアルワケガナイジャナイデスカ」
「なによ、そのわざとらしいカタコト文字は!だいたいね、この美顔に手を上げる人間なんて誰一人としていないんだからね!?アンタくらいよ!美人は国宝級に重宝されなくちゃいけないのよ!!」
「なにその理不尽さ・・・。」

でも・・・今思えば私、初めっからトンデモナイことしてるよね
いくらなんでも初対面の相手に、派手にぶっ放すなんて。

「だからその分私の言うことをお聞き!私に平伏し!!敬いなさい!!!」
「えー・・いきなりそんなこと言われても・・・。っていってもどうすればいいんですか?こんな所で平伏したって、外聞が悪いだけですよっ!」
「相変わらず生意気ねっ!・・でも確かにそうね。そんなところ静に見られでもしたら、私瞬殺ね。私が得する事なんて何一つ無いわ」
「でしょでしょ??」

なんでここに高城君が出てくるかは別として、少しでも話しを違う方向にもっていきたい。これ以上借金が増えて、バイトの時間が増えるのはごめんだわ。

「―――じゃあ、2つ、お願いを聞いてもらいましょうか?」

くすくすっとオーナーが笑う。
いっときますが

メチャクチャ恐いです。

「じ、人道的に許されるものなら。。。あと。。お金にかかわらないことなら」
「そうねぇ、確かにそれは大切よね。あなたの年は経済的に豊かじゃないものねぇ」
「いえ・・・一番重要なのは前のほうのことなのですが。。。」

少しずつオーナーが私のほうに近づいてくる。

「あらぁ、信用ないのね。私ほど教科書にふさわしい人間なんてそうそういないと思うけど?」
「え?どの格好でそれを言うんですか?」

今日来ているのはどう見ても『英国風のドレス』だ

「これは個人の自主性を主張しているのよ。好きなことは好きって言わなくちゃぁ、大きな大人には成れないのよ!」

そう言いながらもなぜか、再度私のエプロンを脱がしにかかる。
「ちょっとオーナー!何を」

さすがオーナー・・・脱がせるのは手慣れている。大人の人ってみんなそうなのかしら?

「約束その1〜♪」
「へ?」

オーナーは私のエプロンをヒラヒラと躍らせながら言う。
何・・・これ・・・。

「私以外の前でこのエプロンは着ないこと」

「は!?」
何それ!!

「なんで!?それ結構高かったんですよ!最初あきらめたのに、可愛くって、どうしても着たくって。頑張って我慢したけど、しきれなくって!試着してみたらやっぱり欲しくなっちゃって!!折角お金貯めて買ったのに〜〜!!」
「あらっ!じゃあ今日初めて人前で着たってこと?」
「そですよ!!一回しか着てないんですよ!だからそれは止めてください!」
「ますます良いわねっ!私しかその姿見てないなんて、好条件ね。」
「何言ってんですかーー!?」
楽しそうに笑っているオーナーの前で一人パニックを起こしていると
「きゃっ!?」
急に腕を掴まれ、前につんのめってしまった。

―――チュッ





ん?
なんかほっぺたに触られたような・・・?

なぜかオーナーの美顔が真横に・・・?
「クスクスッ、約束破ったら今度は唇にするからね?」

って今のってやっぱり!?っていうか、この格好って!!

つまりはオーナーに抱きしめられている状態なわけで

「ギャー!!ちょっとオーナー離して下さ・・」
「約束その2〜♪」
「・・・聞けよ(怒)」

私の怒りを完全に無視し、あろうことかこのカマは私の耳元にフッと息をかける。
アンタ・・・こんないたいけなヲトメになんてことを。。。

私の頭はそれだけでパニックを起こし、おまけに最高の笑顔で

「このことは誰にも言わないこと・・・柚、返事は?」

「―――はい。」

抗いようがなかった。

「さてっ、じゃあ開店の準備をしますか!」

ふとオーナーが私を離してくれる。折角新調した私のエプロンは、信用できないという理由で没収されてしまった。
理不尽すぎる。。。

「ほらっ柚、手伝いなさい!お客様が来ちゃうでしょう!?」
「え?今日はバイトの日じゃないんですけど。ってゆうかお料理教室は?」
「アンタのせいで時間がなくなっちゃったのよ!今日は静もいないし、忙しいんだからね!?借金返すためにも、働け!」
「そんなぁ〜」

もう、今日は何にも良いこと無いわ!ちゃちゃっと終わらして、隙を見て早々に逃げ出そう(泣)

「安心なさい?」
「へ?」
「愛のお料理教室なら、今度手取り足とり教えてア・ゲ・ル☆」

何故かオーナーは私に顔をしかめ・・・もといウィンクしてきた。
恐るべし、オカマ。



やはりバイトの無い日はなるべくここに来ないようにしよう。
私には心にも体にも、刺激が強すぎるようだ。


終わり