Case1 『もしも……ヒロインが実は「黒まっきー」ばりに心の闇を抱えた裏ありヒロインだったら(笑)?』


――――まっきーグッドエンド? にて。



「アンタにだけ、特別に俺の秘密教えてやるよ」
「……」
「大丈夫だよ、これからもちゃんと『いつもの華原君』でいるからさ」
 じゃ、と軽く手を挙げて、教室を出て行こうとする雅紀。
 しかし、ヒトミの様子が一変したのを感じ、ふと立ち止まる。

「……やっと本当の自分、出す気になったんだね」
「え……」
「くすっ……隠してたつもりだったんでしょ? ずっと」
「何言って……」
「『誰も俺のことなんて分からない』? ……本当にそう思うの?」

 只ならぬ雰囲気に、冷や汗を流すのは雅紀。
 そんな雅紀を知ってか知らずか、ヒトミは静かに続ける。

「ねえ、華原君。貴方は今まで、『いい人』を演じてきたって言ったよね?」
「……」
「そして心の中では『誰も俺の本心なんて分からない』、そう思ってきた。そうだよね?」

 見上げるように、そっと雅紀の瞳を覗き込むヒトミ。
 その表情は、黒い翳りを帯びていて、いつものヒトミからは想像も出来ないほど冷たい。

「でも……思わなかった? 人間なんて、誰も他人の本心なんて分からないんじゃないかって……」
「……」
 フッと笑みを浮かべるヒトミ。。
 しかしそれは、いつものような暖かな微笑みではなく、嘲笑するような冷笑で。
 雅紀は、背筋が冷たくなるのを感じていた。
「華原君が『演じている』ように……他の皆も『演じている』かもしれない……そうは思わなかったの?」
「っ!?」
 思わず後ずさる雅紀。
 そんな彼に、暗い笑みを浮かべながら一歩詰め寄るのはヒトミ。
「くすっ……ねえ、華原君。本当に皆は、貴方の本心に気付いてなかったのかな? 皆は『本心』で貴方に接していたのかな…?」
「桜川っ……」
「あれ、どうしたの? 顔色、悪いよ?……『いつもの元気』が無いみたい。くすくすっ……」
「何で……どうし…て……」
「……大丈夫だよ、華原君。きっと皆、『いつも通り』だから……ね? くすくすくすっ……」

 いつの間にか教室の端に追いやられた雅紀は、目の前の少女を見つめる。

 これは一体誰なのだろう?
 彼女は……桜川ヒトミなのだろうか?
 答えは勿論yesしかないのだが、それを認めない自分がいる。

 いつも自分に向けられていた、穏やかで真っ直ぐな視線。
 常に本心を曝け出し、自分に向かってきた真摯な心。
 それを感じたからこそ、今、彼女に打ち明けてしまったのではなかったのか?

 自分の暗く、黒い部分を。
 偽りの仮面の素顔を。

 でも……
 彼女は冷たく笑った。
 まるで俺だけが、何も知らないとでも言いたげに……。

――――彼女の視線から逃れられない。


「……あ、もうそろそろ帰らないと。お兄ちゃんからメール入ってるー」

 ポケットの携帯を見て、明るい声を上げるヒトミ。
 思わず見つめたその表情は、いつも通りの表情。ぱっと花が綻んだように、輝く笑顔がそこにあった。

「じゃあね、華原君! また、学校でね?」
「あ、ああ……」

 雅紀は、そう紡ぎだすので精一杯だった。
 この豹変ぶり……まるで、鏡に映った自分を見ているようで、身震いしそうになる。
 俺は今……どんな表情をしているのだろう。そんなことを、どこか頭の遠くで考える自分がいた。

 扉に手を掛けたヒトミが、ふと立ち止まった。
 途端に、教室に暗く陰鬱な……それでいて、とても鋭利で冷たい空気が流れる。

「これからも…『いつも通りの華原君』でいてね? 私たちも『いつも通りの皆』でいたいから……」
「っ…………」
「じゃあね! うわわっ……っと」

 パタパタと駆けていく足音だけが、廊下に響く。
 教室が突然、色を取り戻したような感覚に陥る。

「……くくくっ……」

 口の端から漏れる、震えにも似た笑い。
 歯の根が合わず、寒気が襲ってくる。

「くくっ……あははははっ……」

 笑いが止まらない。
 おかしいのか、悲しいのかも分からない。

「……ハハッ……本当の馬鹿は……俺だったってことか……ハハハッ……」



 誰もいなくなった教室に、乾いた笑い声だけが響く。
――――彼女の言葉が、頭から離れない……
 明日からの世界が確実に変化してしまうことを、雅紀は感じざるを得なかった。




another end?


 ヒロイン×白まっきーって感じ?(笑)この「微妙エンド」を見た後、真っ先にこの設定を思いつきました!
 まっきー、
大好きvvvですよ? いや、ホントに。でも、このエンドははっきり言ってかなりむかつきました(笑)お前何様のつもりだよー!? みたいな。で、即脳内妄想劇場が流れ始め……こんな話が出来上がったのでしたv いやー、実際こういうことってあってもおかしくないかなーと。 まっきーって、めっちゃ悲劇のヒロインぶってる感じじゃないですか? いや、批難してるわけじゃなくて、ただただナイーブで純粋なんだと思います。でもね、実際乙女が抱える心の闇って、結構深かったりしません?? 私はもう乙女っていう年齢じゃないので(汗)どうだかしりませんが、高校生ぐらいの女の子たちの抱える闇って、実はすんごく根深いものだったりすると思います。そういう思い出がありますゆえ……。なので、まっきーよりもヒロインちゃんの方が実は深い闇っ子(笑)だったりしそうだなーという思いが、この妄想に繋がりました……ごめんヒロイン。そして、実際悲劇のヒロインぶってる奴ほど、他の悲劇には気づかないものだったり。まっきーは自分だけが酷い体験をして、心に傷を負ってると思い込んでいるようですが、もしかしたら皆もそうなのかもしれないよ? という思いをぶつけてみました。いや、単にまっきーがむかついたから(笑)仕返ししてみただけかも(どうしようもねーな)
 他人の心を分かろうなんて、もしかしたらおこがましいことなのかも……。分かりたい、分かり合いたいっていう気持ちは大切にする。でも、根本的に理解し合うのは本当に難しいことだし、無理なのかもしれません。まっきーには、そういうのを分かってほしいなーとお姉さんは思ったわけです(笑)高校生らしい純粋さは可愛いけどさ。
 あー、書けてすっきりした(笑) 私はあれだな。物書きとしては「S」みたいです(;´▽`lllA`` あはは……。

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