クロックタワーゴーストヘッドss 




『花舞って、君待って……』






 1999年春――大胆かつ凄惨を極めたあの事件は、その真実と人々の思いの全てを灰にし終幕を迎えた。
 かつて栄えたあの研究所は、赤々とした炎に包まれ、関わったもの全てを焼き尽くしている。

「私……」
「辛いか?」
「みんな、私のせいで死んだから……」

 そう呟き、高台から町を見下ろす少女。
 この事件に深く関わり、また沢山のものを失った少女――御堂島優は、寂しそうに涙を浮かべ、でもどこか達観したような、そんな複雑な表情を浮かべていた。そんな優を見つめ、必死で言葉を探しているのは刑事の礎等。彼もまた事件に巻き込まれ、優と共に事件の真相を知りながら生き残った、数少ない人物である。

「そうだね……」
 気の利いた言葉を掛けたくても、この状況では何も出てこなかった。礎は今にも消えてしまいそうなほど儚く震える、優の細い肩をじっと見つめる。
「……私が死ねば良かった。そうしたら、誰も死なずに済んだのに……」
 そう言って肩を震わせた優に、礎は妙な違和感を受けた。優の言葉を疑ったわけではない。今のは繊細な彼女の本心だろう。ただ、今の言葉に呼応するかのように……そしてそれを否定するかのような……そんな雰囲気が彼女から感じられたのだ。
 その理由は……彼女、御堂島優のもう一つの人格が関係している。
 優には、もう一人別の人格が宿っているのだ。それは強気で勝気で残忍かつ非道な性格の……優とは正反対の男性だ。
 彼――翔が、何のために存在しているのか。それは誰にも分からない。もしかしたら、優と翔には分かっているのかもしれないが……。

 礎は呟くように言った。
「いや……君もあそこで死んだのさ」
「え?」
 驚いて振り返る優を見ずに、礎は燃える研究所を見つめる。
「さて、バケモノ退治に行くとするか……骨が折れそうだ」
 そう言って踵を返す礎を、しばらくの間優は見つめていたが、やがて何かを吹っ切ったように駆け出した。
 礎の後を追いかけるように。

 礎は、自分を追いかけてくる少女に、様々な思いを馳せていた。
 彼女が今どんな表情をしているかは見えない。
 しかし何となくだが、彼女は微笑んでいるような気がした。

――呪われた子と言われた過去の君は、あの炎と共に死んだんだ。

 礎は、ほんの少し走るスピードを落とした。




















 あの事件から、一年の月日が流れた。
 私はあれから鷹野家で、平穏無事な生活を送っている。
 高校生活も今まで通り……相変わらず、あまり社交的にはなれないけど、それでも楽しくやれていると思う。
 おじさんや秋代ちゃんを亡くした鷹野家は、最初はとても静かで寂しかった。けれど、月日は人の心を癒すから……最近では、弥生おばさんも千夏ちゃんも、雅春君も……皆の顔に、少しずつだけれど笑顔が戻ってきたように感じる。以前のように明るい家庭に戻るのも、そう遠くはないと私は感じている。

 私は一人、あの高台に来ていた。
 今は桜が満開で、町全体が桃色に霞んで見える。ここから見える景色は、とても綺麗だ。そしてその風景の中には、全てを焼き尽くし灰となった研究所跡地も含まれる。

 制服の胸ポケットを擦る。

――ミコシサマ……

 私の大切な御守り。
 私を守ってくれる、かけがえのないもの。
 私の心を支え、安心させてくれるお父さんの形見……

 あの頃の私は、このミコシサマが無ければ自分が自分でいられないと思っていた。
 ミコシサマが無いと、御堂島優でいられない。自分を保つことが出来ない。そう思っていた。
 ミコシサマだけが私を守ってくれる……そう信じていた。
 でも……

「翔……」

 呟いた言葉は、風に乗って消えていく。



――翔

 私の中の、もう一人の私。
 自分とは異なる彼。
 最初はただ、彼の存在に恐怖し、絶望していた。

 彼がいる限り、私は私でいられない……。
 どうして私の中に、貴方がいるの? 
 どうして……どうして……?
 そんな風に感じていた。

 人を傷つけることに躊躇いもない彼。私はそんな彼が怖かった。
 気付いたら、ナイフを持って血溜まりの中を立っていた私。
 目の前には、もはや瀕死と言える状態のクラスメイトたち。

 何……これ?
 何も分からない。
 これは……私がやったの…?

 ……でも、手にははっきりと感触が残っている。

 嫌……嫌だ……

 私はもう、何も考えられなかった。
 ただ怖くて……自分の中に潜む影が、ただ怖かった。

――でも、本当に何も覚えてないの?……

 違う……。私は確かに聞いた……。

「優……お前は俺が守ってやるよ……」

 心に直接響く声。
 今まで、何度も聞いていたような気がする懐かしい声。
 それはとても優しくて、とても柔らかくて……何だかとても安心して、意識を手放してしまった。

 秋代ちゃんの部屋でショックを受けて、酷い頭痛を感じた時……貴方が……翔が、外へ出たがってるんだって分かった。
 私は貴方に替わるのが怖かった。また何か、酷いことをしてしまうんじゃないかって……。
 でも、あの時だって翔は……

「優……そんなに怖がるな……」

 そう言って、私を眠らせてくれた。
 ……守ってくれたんだよね、私のことを。恐怖や悲しみから、遠ざけようとしてくれたんだよね。
 
 あの悪夢のような事件、私を最後まで守って支えてくれたのは、警察でもなく、神様でもない。
「私を守ってくれたのは、翔だけだよ……」

 高台から見た、燃え盛る研究所。私が全てに絶望して、失意の底にいた時……

――つらいか?

 礎さんが私に言った言葉。
 私は、ただ涙を零して言った。「皆私のせいで死んだから……」と。
 でもその時、確かに私は翔の声を聞いた。

――辛い? 勝手に死んだんだろ……

 勝手に死んだ……。
 確かにそうだったかもしれない。
 私は巻き込まれただけで、何も悪くない……そう思えば楽だっただろう。
 でも私はそこまで強くなかった。
 自分のせいにして、自分を卑下しないと、どうにかなってしまいそうだった。
 罪悪感に押しつぶされそうになっていた。
 今思えば礎さんが「そうだね……」と言ったのは、そんな私の心境を分かってくれていたからかもしれない。

「お前のせいじゃねえよ……」

 そう翔は言ってくれても、私は耐えられなかった。
 だから「私が死ねば良かった……」なんて呟いてしまった。
 でも翔は、別段怒ってるわけでもなく、いつもの余裕のある口調で……まるで、幼い私を諭すような、そんな調子で言った。

――……俺様は死なねえよ

 あの時私は、我に返った気分だった。
 私が死ぬ……それはつまり、翔も消えてしまうということ。
 私は多分、心から死にたいなんて思ってなかった。死にたいんだったら、もっと早くに死んでいたし、死のうと思えばいつでも死ねた。
 翔を消したくて、全てに絶望していたけれど……でも、本当は……心のどこかでは、彼を消すのが嫌だったのかもしれない。
 
 私が最後に頼れるのは、翔だけだから……
 
 大きく溜め息をついて、桜を見上げた。
 彼は今、どうしているんだろう。
 あの事件以降、彼がどうなってしまったのか自分自身分からなかった。もしかしたら、自分の知らない時に表に出ているのかもしれないが、私自身はそれを感じることは出来なかった。
「……これがある限り、翔は……」
 ミコシサマを手にとって眺める。

 赤い、大切な宝物。これがある限り、私は私でいられる。
 でも……翔が表に出ることもない……
 かつてはそれを、心の底から望んでいたのに……自分が自分でいられることが、何よりも大切だった。
 翔が自分の中からいなくなってくれればいい、消えてくれたらいい、それしか考えていなかったのに……

「翔ぉっ……」
 情けない声を上げたと、自分でも思う。でも、それほどまでに翔のことが大切になっていた自分を、もう偽ることは出来なかった。
「会いたいっ……翔に会いたいよぉ…………絶対無理なことでも……それでも……っ、それでも私は……」
「優……」
「!?」
 突然聞こえた声に、私は驚きを隠せなかった。だって、この声は……
「翔……?」
 俯いていた顔を上げようとしたが、体が言うことを聞かなかった。そして次の瞬間には、背後から優しく抱きしめられた。抱きしめられたというよりも、何か温かいものに包み込まれたと言った方がいいかもしれない。
 あまりのことに声も出せずにいると、耳元で優しい声が響いた。
「優……俺はいつでもお前を見てる……俺たちはずっと一緒だ……」
「翔……」
「言っただろ、お前は俺が守ってやるって……だから安心しろよ……優」
 あまりにも優しく、私の心に強く響く声に涙が止まらなかった。
「っ……翔っ、私……ひっく……」
「優……あんまり泣くな………お前のことは、俺様が一番良く知ってる……何も心配すんな……」
 この言葉の後、少しだけ抱きしめられた力が強まった気がした。
「翔……私、貴方にずっと言いたかったことがあるの……」
 私は、目には見えないその回された腕に、そっと自分の手を添えた。
「私をずっと守ってくれて…ありがとう」
「優……」
「私は貴方に、何度も救われた。貴方がいなかったら、きっと私は今ここにいないよ……」
 私はぎゅっと、翔の腕を掴んだ。
「翔が何で私の中にいるのかとか、翔が誰なのかとか、そんなことはどうでもいいの…………貴方は私…私とは違うけれど…でも、私はいつも…翔を感じてる……」
 掴んだ腕に更に力を込めると、翔の温かさが直に伝わってくる。すると私は、もっと強い力で抱きしめられた。
「…………俺だって、いつでも優を感じてる……」

 こんなに優しくて、穏やかな声の人が、冷酷非道で残虐なんて、本当に信じられない。
 でも私は、逆に嬉しかった。
 貴方は私だけに心を許してくれるから。――私だけに優しいから。

「ふふっ……翔のことだって、私が一番良く知ってるんだから」
「……かもな」
 微かだけど、翔が笑ったような気がした。
 私は目を瞑ったまま思い切り体を反転させ、そのまま翔に抱きついた。
「翔……私も貴方を守るからね……」
 そう言った瞬間、温かく柔らかな風が私の全身を包み込み、私の意識は段々遠のいていく。
 うっすらと瞼を上げた先には、私じゃない私が、優しい顔で微笑んでいる。
「翔……」
「……ありがとな……」
 そこで、私の意識は完全に無くなった。






 気付くと私は、高台にある桜の木に寄り掛かっていた。どうやら眠ってしまっていたらしい。辺りはすっかり朱色に染まっており、夕方であることを私に教えていた。
「……」

 今のは夢だったのだろうか。
 翔に会うなんて、本来なら絶対に叶わない夢だ。
 彼は私。
 私の中に住んでいる、もう一人の私なのだ。

「翔……」

 でも……夢だとか現実だとか、そんなものは関係ない気がした。
 翔と会って話した事実。それが私にとっては全てなのだから。

 私は、手に握られたミコシサマを見つめ、それを額にかざした。
「ミコシサマ……今までどうもありがとう。でも私、もう大丈夫だから……」
 そして、そのまま高台の柵まで駆け出す。
 柵に手を掛けると、眼前には焼け野原が広がっている。夕日を浴びて、それすらもとても美しいものに映っていた。
「さよならっ……」
 そう叫ぶように言って、私はミコシサマを夕日目掛けて投げた。
 ミコシサマは、夕日を纏いキラキラと輝きながら、あの焼け野原へと落ちていった。
 それはまるで、炎のようだった。

「さよなら……お父さん」

 涙がつうっと流れた。
 でも、後悔はしていない。
 私には……翔がいてくれるから。
 翔がいるから、私は私でいられる。
 翔のいる私が、本当の私だって、今ならそう思えるから……

――さようなら、過去の私……

 夕日が落ち、月が顔を出すまでの間、私はずっとあの焼け野原を見つめていた。











「優ちゃん! どこ行ってたんだ?!」
「あ、礎さん……」
 高台から降りてきた優に、礎はすかさず声を掛けた。
 礎はあの事件以降、何かと鷹野家とは親しく関わっている。それは彼が弁天警察署勤務ということもあるが、何よりも事件の真相を知るのは自分と優だけ……そう思うと、まだ年若い少女だけに全てを背負わせるのはあまりにも胸が痛み、自分が少しでも彼女の心を軽くしてあげられたら…と、こうやって時々鷹野家に顔を出すようにしているのだ。
 今日もそういったわけで鷹野家に立ち寄ったのだが、家に着くなり弥生が大慌てで飛び出してきて、今に至る。
「何度電話しても繋がらないし……鷹野さんも心配していたよ」
「あ、携帯の充電切れてしまって……」
 優はポケットから取り出した携帯を見て、すまなそうに呟いた。
「優ちゃん、ここら辺は何かと物騒だ。最近では婦女子を狙った犯罪も多発してる。こんな時間に一人で出歩くのは、あまり感心できないな」
 そう諭すように言いつつも、心のどこかでは彼女にはどんな災いも起こらないだろう……という、おかしな自信があるのだ。何故かと言われれば、それは多分……
「礎さん……ごめんなさい。わざわざ捜しに来てくれたんですよね。お仕事も忙しいのに……」
 俯いてしまった優を見た礎は、どうしたものかと困惑した。

 本当は、鷹野弥生は関係ない。
 優が帰ってなくて、心配でいても立ってもいられなくなり飛び出したのは自分だ。むしろ鷹野家に通う理由も、優に会いたいという気持ちだけだった。
 しかし、彼女が好きだ……とはまだ言えない。彼女は確かに美しく儚げで、守ってあげたくなるような女性である。
 でも、彼女の中には「彼」がいる。そのためか、彼女には力強さや気高さも感じられるのだ。
 礎自身、この少女の不思議な魅力に惹かれていることは確かに感じているが、それは異性としてよりも、同じ人間として……こちらの方が勝っている状態であった。
「ごめん……落ち込ませる気はなかったんだ。ただ――」
 言葉を遮るように、優が顔を上げた。が、そこにいたのは、先刻の気弱な少女ではなかった。
 その顔付きはもちろんであるが、身に纏うオーラのようなものが明らかに優とは異なっている。
 礎は反射的に、数歩後ろへと下がる。
「テメェ…優に惚れてんのか?」
 予想もしないことを聞かれて、礎は息を呑んだ。そして咄嗟に口から出たのはこれだった。
「君は……あの時の……」

 彼とは一年前の事件の時に、一度だけ話したことがあった。
 あの時は本当に驚いた。二重人格の人間と関わった経験は少なからずあったが、あそこまで変わってしまう症例に出会ったのは初めてだった。あれは、明らかに男性の声だ。そしてその立ち振る舞いも、仕草も、何もかもが彼女とは異なり、本当に別の人間になっているという印象を受けた。

「質問に答えろ」
 短く切ったその言葉には、聞いたものを震え上がらせるような凄みが含まれている。礎も、一瞬背筋に寒いものを感じた。
 しかし、答えようにも、どうにも上手い答えが出てこない。しばらくして出た答えは……
「分からない……」

――シュンッ

 風で花びらが舞った。と同時に、背後から声がした。
「金輪際、優に関わるな」
「!?」
 いつの間に回りこまれたのだろう。
 自分だって刑事の端くれだ。ある程度武術の嗜みはあるし、運動神経にも自信がある。しかし、今は全く反応することが出来なかった。動きがあまりにも速く鮮やか過ぎて、目で追うことさえ出来なかった。
 冷や汗が流れるのが分かる。
 振り返ることも出来ないまま、礎は沈黙した。翔はそのまま続ける。
「……テメエが優に惚れてようが惚れてまいが、んなことはどうでもいい……ただの興味本位で優に近づくんじゃねぇよ! それとも……優を救えるだとか、分かってやりたいなんて思ってんじゃねえだろうな? テメエには無理なんだよ」
「……」
「アイツを分かってやれるのは、この俺様だけだ…………俺がアイツを一生守る……」
 そう言った瞬間、翔が放つオーラが一際強く鮮やかに輝いたように見えた。
「しかし、君は――」
「失せろ。次もしまた優に近付いたら……そん時は……」
 翔の瞳が鋭く光る。礎は振り向かなくても分かった。そして、首筋に冷たくて硬いものが当たっているのも……
「テメエを殺す……」
「っ……」
 そしてその後、礎は背中に重みを感じる。どうやら優が倒れ掛かってきたらしい。
「ゆ…優ちゃん!」
 慌てて振り返り、彼女の体を支える。すると、彼女ははっと我に返ったかのように顔を上げた。
「あ、あれ? 私……」
「優ちゃん……君は……」
 しかし、礎が何か言おうとする前に、優がそれを遮るように首を振った。
「翔に……会ったんですね……」
「……ああ」
「そうですか……」
 それだけ言うと、優は歩き出した。しかも、その足取りはとても軽いように見える。
「ちょっと待ってくれ!」
 礎は叫んだ。優は、その場に立ち止まる。
「君は……いや、君たちは……本当にそれでいいのか? 優ちゃんだって、そんなんじゃこれから……。それで、本当に幸せな生活を送れるのか?」
 優はしばらくの間黙っていたが、やがて礎を振り返った。

 月明かりに照らされた彼女は、とても美しかった。
 儚げな白い肌に、凛とした強い瞳……礎は、しばらく惚けたように見つめていた。
 優は困ったような、でも嬉しそうな微笑をたたえている。

「……私も、これが一番いいのかどうか分かりません。他にもっと良い方法があるのかもしれない。でも……」
 優はここで一旦話を切り、礎へ向き直り、真っ直ぐに目を見る。
「翔を分かってあげられるのは、私だけ。私が彼を一生守る……!」
「優ちゃん……」
 礎は驚愕した。優が、彼――翔と同じことを言ったことにもだが、それよりもあんなに儚げで弱々しかった優が、あれほどまでに強く思いを告げたことに心底驚いた。

 しばらくの間、お互い見つめ合っていたが、やがて礎がふっと笑みを零した。複雑な表情で礎を見つめる優に、礎は歩み寄り、右手を差し出す。
「え……」
「じゃあ俺は、そんな君たち二人を守るよ」
 礎の言葉を聞いて、優は更に困惑した表情を浮かべる。
「え……あの……」
「味方は多い方がいいだろう。何せ俺は、君たちのことを知る数少ない人間だからね。味方につけた方が、得策だろ?」
 礎は、少し強引過ぎるだろうとは思ったが、あそこで引き下がるわけにはいかず、このような強硬手段に出た。
 翔にあそこまで牽制され、優にも遠回しに拒絶され、正直もうこの子に関わるのは止めたほうがいいと思った。
 しかし、それでは最後の最後でこの子を見捨てたことになるのではないか…………いや、単にこのままこの子と離れたくない、そう礎自身強く思ったからだった。
 優はしばらく、唸るようにして思案していたが、やがて諦めたようにその右手をゆっくりと差し出した。
「……よろしくお願いします」
 ぽつりと呟く優に苦笑しながら、礎はその白く細い手を取った。
 桜が舞って、二人の髪を掠めていった。



 帰り道、隣を歩く少女を眺めながら、礎は溜め息をつく。

――参ったな……こんな高校生に本気になりそうだ……

 そして心の中で「もしかしたらこれも……才堂家の呪いだったりしてな……」と一人苦笑した。





fin

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●あとがき●
二次創作デビュー!  しかも原作にめっちゃ忠実に、そして後は私の脳内に忠実に(爆)めっちゃ一生懸命書きました。こんなしっかり書いたのは、ホント久々です……。それだけ私は、このクッロクタワーゴーストヘッドに心を奪われているんですvvv でも、はっきり言って、礎とかのキャラは全然よく分かりません!!(爆)説明書には「クールでキザ」なんて書かれているが、どの辺でそれを表せばいいのかさっぱりだったよ(涙)各キャラの状態を説明すると……優⇔翔←礎って感じです。つまり、礎は優と翔両方に惹かれてるのです☆人間として、惚れちゃってるわけですねぇ、ハイ。ま、私は翔×優があればそれで良し! なんで(おい)、ぶっちゃけ礎が死のうが生きようがどうでもいいです(酷)翔に殺されるなら、それも幸せじゃね? ね? 
「さあ……翔タイムの始まりだ」(変換ミス)キャー!素敵過ぎる★(死んでこい)今回の小説で、翔の俺様っぷりと、優溺愛っぷりが表現できてれば、私としては満足ですvvv